亜人と獣人は開放
「金貨だけ吸い込め『マジックボックス』!」
幸太郎は試しに、そのように命じてみた。金貨だけ吸い込むのか、
袋ごと吸い込むのか知りたかった。結果は『袋ごと吸い込む』だった。
『鑑定』といい、『マジックボックス』といい、明らかに忖度している。
どんな仕組みかわからないが、現代の日本のAIよりも
優秀なプログラムに感じた。
階段から2階へあがると、メイドが3名震えて固まっていた。
階段の前の部屋が住み込みのメイドの部屋らしい。
奴隷の世話係なのだろう。
「部屋に入っていて下さい。危害は加えません。
これから少し危ないことをします」
メイドはぺこぺこと頭を下げて部屋に閉じこもった。
奴隷商館の2階と3階が奴隷の部屋になっている。
それぞれ8室、合計16室。
単純に16名いる計算だ。鉄格子の牢屋みたいになっていて、
客が奴隷を直接見て選べる方式。
奴隷にプライベートは無いらしい。ひどいものだ。
幸太郎は2階に『密室』をかけると宣言した。
「私はネクロマンサーだ。こちらの依頼人の意向で、
亜人と獣人は開放する。我々についてくるもよし、
そうでない場合は1階の金庫室を開けてあるから、
持てるだけお金を持って逃げるも自由だ。
・・・カルタス、亜人と獣人の部屋の鍵を開けてくれ」
カルタスと4名の騎士は大きな錠前の鍵穴に指を差し込むと、
『くるり』とひねった。錠前が音を立てて落ちる。
他の人族の奴隷2名からどよめきが起こった。
エルフの女性が2名。目の周りが黒い狸人族の姉妹が2名。
顔に傷のある黒狼族の男が1名。リザードマンの男が1名。
合計8人が鉄格子の扉を開けて出てきた。
ブロトの言う通りだとすると、亜人と獣人は全て2階にいるらしい。
客が一度に見て回れるよう配慮しているのだろう。
(C)雨男 2021/12/17 ALL RIGHTS RESERVED




