大通りからの悲鳴
幸太郎はアザラシゴーストを、夜の空へ飛ばした。
目指すは『城塞都市カーレ』方面の門だ。
『ペイント』で色を付けようかと思ったが、ぼんやり光っているので十分だろう。
これはジャンジャックへの合図だ。
幸太郎は再び『冥界門』を呼ぶ。
「カルタス、そっちはどうだ? もう一度開いても問題なさそうか?」
「はい、問題ございません。どうぞご命令を。
すでに全員準備完了しております」
「いくぞ・・・。開け『冥界門』!」
再びカルタス達と、ゴーストが飛び出してきた。
ゴーストたちは作戦通りに大通りの上空へ向かって飛んでいく。
効果てきめん。すぐに悲鳴や叫び声が聞こえてきた。
幸太郎はエントランスホールへ向き直ると少し大声を出した。
「くそう! 失敗だ! 逃げるぞ! はぐれたらカーレで落ち合おう!」
幸太郎はメイドの人たちに一礼すると、荷車を押して門を出た。
荷車を押す幸太郎たちの少し後ろを、カルタスたちが剣を振り上げ
ギクシャクした動きで追跡する。もちろん演技だ。
誰かが見ても『追われている』ような感じで。
これはテキトーでいい。完全な効果など期待しても意味は無い。
最初の作戦のスタート地点へ戻ってきた。今度はここにギブルスがいた。
ギブルスたちに荷車を渡す。子供たちは蓋を開けてギブルスたちを見た。
そして、後ろのガイコツの騎士を見て『ひっ』と小さく悲鳴をあげた。
「大丈夫だよ。この騎士様たちは、みんなを助けに来た正義の騎士。
おじさんの友達なんだよ。さあ、みんなで騎士様にお礼を言おうね」
子供たちは顔を見合わせると『せーの』で小さく声を出した。
「騎士様、ありがとう」
カルタスは顔がガイコツなのに、露骨に照れている。
そして4名の部下たちはそれぞれ『決めポーズ』をとっていた・・・。
おまえら・・・。
「よし、ガーラ、タマン、荷車を押せ。わしらは屋敷へ退避じゃ。いくぞ」
幸太郎とモコはブロトの商館の裏通りを走る。ギブルスたちは表通りだ。
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