お茶のお代わりを
幸太郎とモコは子供たちを連れて一階へ降りた。
相変わらずモコの耳には何も聞こえてこない。だが、急がなければ。
幸太郎はケイトの縄を切った。そしてお願いをする。
「私たちがここを出たら、100数えてから助けを呼びに行って下さい。
大通りは大騒ぎになっているでしょうが、
番兵などを屋敷へ呼んで襲撃があったことを伝えて下さい」
ケイトはこわばった顔でうなずいた。幸太郎はついでに付け加えた。
「ああ、それから・・・ファルネーゼ様とイネス様に、お茶のお代わりを。
もうお茶がぬるくなっていると思われます」
ケイトはきょとんとした顔をしたあと、吹き出した。
他の伏せているメイドたちにも笑いがこぼれた。
庭へ出た幸太郎は荷車と空の酒の樽を『マジックボックス』から取り出した。
モコがすでに作戦を伝えておいたのか子供たちは次々に樽へ入った。
幸太郎は『冥界門』を開く前に、警護の死体に『成仏』をかけて回った。
「よし、お待たせ、モコ。そろそろエルロー辺境伯の死体が
大通りへ到達するころだろう。もうここからは一気に行く。
10分でブロトをぶちのめして、ギブルスさんの屋敷へ帰還する」
「はい、帰還したら、みんなで夕食にしましょう」
「ではフェーズ2、スタート!」
幸太郎はアザラシゴーストを召喚した。
子供たちが「かわいい」と笑顔になった。
・・・幸太郎は初めて地上へ降りた夜を思い出した。
あの時に色々試して良かった・・・。
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