私たちの復讐
「話を戻すようですが、イネス様もメイドの皆様も、まるで予行演習を
していたかのような動きですが・・・?」
「はい、予行演習をしておりました。先ほど申し上げた通り、
私たちはあなた方をお待ちしておりました。
・・・私たちは旦那様の味方ではありません。
いつか、このような時がきたら、その方たちに協力する・・・。
これが私たちの『復讐』なのです」
「復讐? いったい・・・なぜ?」
「不思議ですか? ネクロマンサー様。私たちは全員『女』なのです。
種族が違おうとも、宗教が違おうとも、
子供たちを殺ろされて喜ぶ女など存在いたしません。
もし、いるならば、その者はすでに『女』ではありません。
・・・しかし、私たちは武力も無い、地位も人脈もない、
旦那様を止めることはできません。ですから、私たちは待ったのです。
風が来るのを・・・いつか、風が吹くときを・・・。
今日は、私たち全員が待ち望んでいた『その日』なのです」
モコが仮面を外そうとした。イネスの話に誠意を見せたかったのだろう。
しかし、幸太郎がそれを止める。
「仮面を外すな。俺たちの顔を知られると、この方たちに迷惑がかかる。
拷問するかもしれないし、首輪を付けるかもしれない、
もし『魅了』のような魔法があれば全て話してしまうだろう。
そして、顔を知っているとわかれば、どんな目にあうかわからない・・・」
イネスがモコに優しく微笑んだ。
「ありがとうございます。お嬢様は優しいお方ですね。
いいご主人様をお持ちになっているようで、うらやましい限りです。
・・・さあ、準備は整ったようです。行ってください。子供たちの所へ」
モコは泣きそうになった。こんな形で味方がいたなんて。
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