そうなのですね
「イネス様、申し訳ないのですが、皆様をこのロープで拘束させていただきます。
その後、床に伏せていただければ、危害は加えないことをお約束いたします」
幸太郎は『マジックボックス』からロープの束を取り出した。かなり重い。
「かしこまりました。ケイト、ダイアナ、指揮をとりなさい。
後ろ手に縛るように。アン、ハンナ、メイシンはリネン室からシーツ、
そしてハサミを持ってきて猿轡を作りなさい。急ぎなさい。」
イネスは幸太郎に向き合うと、はっきり言った。
「縛るだけでは不十分でございます。口をふさぎ、情報のやり取りを阻害して
初めて抵抗を封じることができます」
幸太郎は驚いた。そして、警戒した。相手のペースに乗るのは危険だ。
「イネス様。あなたは先ほど、私たちを待っていた・・・と、
おっしゃいました。なぜ、私たちに協力するような真似を?」
「無論、私たちも死にたくないからです。・・・しかし、失礼ながら、
あなた方は、子供たちを救出にきたのではありませんか?」
幸太郎は、黙ってモコのフードを下ろした。これは元々その予定だった。
モコの耳を見れば目的は一目瞭然、命の惜しいものは投降すると踏んでいた。
「やはり、そうなのですね。では、まずは『あなた方に脅されて』
情報をお渡しいたします。旦那様は、塔の最上階です。子供たちもそこに。
二階の渡り廊下以外からは塔に上ることはできません。
先ほど、執事のアンガスが二階へ急いであがりました。
しかし、ネクロマンサー様の急襲があまりに素早かったため、
おそらく渡り廊下の前で『壁の幻術』を使うのが精いっぱいでしょう。
アンガスはそこで事態が好転するのを待っているはずです。
二階には奥様以外、他に誰もおりません。
どうか、奥様はお許しいただけないでしょうか?」
(C)雨男 2021/12/11 ALL RIGHTS RESERVED




