断罪の時は来た
「唯一、俺たちが恐れるパターンは、魔導士が門へ来ない場合。
これだけだ。1人が屋敷に結界を張るなり、とにかく防御を固める。
そして、その間にもう1人が逃げ出して助けを呼びに行く。
騎士などが逃げても追いかければいいが、魔導士が逃げると、
どんな魔法で姿をくらますか見当がつかない。情報が足りない。
それこそ、3メートルの防壁を飛び越えるかもしれない。お手上げだ。
・・・だから、魔導士のうち、1人が門へ来たらこちらの勝利は決定する。
残った魔導士は自分の仕事に専念するしかないからな。
万一、辺境伯側が勝利した場合を考えたら『逃げる』という選択肢は
絶対選べない。あとで殺される。魔導士は2人とも殺す。
生かしておくと、どんな行動をするかわからないからだ。
俺たちは魔導士について無知だ。
そして警護は基本一人残らず殺す。中には、こっちの
味方ってやつもいるかもしれないが・・・
その可能性はゼロに近いだろう・・・」
モコは改めて、現在の状況を確認する。
門の外に出ている警護は、12名、『隊長』もいる。
魔導士も1人来た。しかも、みんな酒を飲んでいる。
完全に幸太郎の手の内だ。
幸太郎が、そーっと『マジックボックス』を開く。
ゾンビの仮面を放り込み、別の仮面を取り出してモコに渡す。
モコは幸太郎の背後に隠れて、そっと仮面をかぶった。
ついに断罪の時は来た。幸太郎は後ろ向きになって仮面をかぶり、
『冥界門』を呼んだ。そして、間髪入れずに
正面を向きながら、戦闘開始の合図を告げる。
「開け! 『冥界門』!」
左右に開いた八芒星からカルタスたち
5名の騎士が飛び出してくる。そして数十体ものゴースト。
ゴーストたちにはあらかじめ、警備の者たちの
足を掴んで止めろ、と指示してある。
油断した魔導士は、カルタスの部下に一瞬で首を飛ばされた。
断末魔さえなかった。
カルタスたちは凄まじい勢いで次々に警護の首を飛ばす。
油断した警護の中には、きょとんとした顔で地面に転がった首もあった。
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