警備上やむをえん
他の警備の者たちも数名出てきた。
中には全身に鎧を付けている『騎士』もいる。
他の者たちが『隊長』と呼んでいる。まんまとかかった。
幸太郎は、こっそり『コール・ゾンビ』を解除。
ゾンビは融けるように消えた。そして、警護の兵士に演技を開始する。
「こ、これは、もしや! ネクロマンサーの使役する
ゾンビではありませんか?!」
「うむ、今、俺たちの目の前で、文字通り消えたな・・・。
ん? そうだ、お前たちはなんだ? ゾンビを倒してくれたようだが・・・。
こんな時間に何をしている?」
「は、はい。あっしらはギブルスの旦那のとこで使ってもらっております。
この酒を、この先にあるジョージ様のお屋敷に届けるように、
と言われまして」
「うう~ん、怪しいな?・・・本当にお前ら、
ギブルスのとこのやつらか? 見ない顔だが・・・」
「な、なんで、あっしらを疑うんですかい?!
あっしは今、このゾンビを倒しましたし、この酒も、本物ですよ!」
幸太郎は、あえて『怪しく』ふるまった。これでいい。
屋敷の敷地から、さらに数名、外へ出てきた。すでに10名を超えている。
隊長と呼ばれている男が、幸太郎たちへ近づいてきた。
「ふーん。本当にギブルスの使いなのか・・・? うーむ、怪しいな。
もしかしたら、この樽の中にネクロマンサーが潜んでおるやもしれん」
「そ、そんな無茶な! こんな酒の入った樽の中に
人が入れるわけないでしょう?!」
「いやいや、わからんぞ? ネクロマンサーなら
何か怪しい魔法でそれを可能にしているかもなあ?
うむ、これは警備上止むを得ん。樽の中身をあらためさせてもらう」
「そ、そんなあああ~~~・・・」
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