これはゾンビですか?
警備の者が数名集まってきた。
おそらく敷地の中にも異変を聞いた者たちが出てきているだろう。
だが、警備の者たちは抜刀して門の周囲に集まるだけで、
門を開けようとはしなかった。
「まあ、当たり前だな。せっかく3メートルもの防壁があって、
門も鉄格子なんだ。2人不審者がいるってだけでは、
開ける意味もない。うかつに開けるなとも
言われているだろう。・・・予想通りだな」
幸太郎とモコは荷車を押しながら、路地から出てきた。
屋敷からは防壁のせいで全く見えていないだろう。
もちろん幸太郎も中は見えない。しばらく様子をみる。
『隊長!』という声が聞こえた。
これはモコだけでなく、幸太郎にも聞こえた。
「かかった!」幸太郎が盗賊の剣を抜いて飛び出していった。
盗賊の剣はジャンジャックにも渡してある。大活躍だ。
「うおおおおお! 怪しいやつらめ! 辺境伯様の屋敷に何の用だ!」
幸太郎はゾンビ2体に体当たりした。
ゾンビ2体は『あーれー』という感じでまろびて吹っ飛んでいった。
幸太郎は数秒『ちゃんちゃんばらばら』と
音を出したあと『どうだ!』と声を出した。
荷車をひいたモコが門の前を通過して、幸太郎に近づく。
幸太郎とモコはお互いにうなずくと、『せーの』で声をあげた。
「う、うわああああ!? なんだこれは!!」
「きゃあああああ!!」
「どうした?! 何があった!?」
門からは影になって見えない警備兵は、門を開けて様子を見に来た。
幸太郎はゾンビに付けておいた仮面を外して、顔を指さした。
「こ、これはゾンビか?!」
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