うなずくゾンビ
幸太郎は『マジックボックス』から荷車を出した。そーっと。
荷車の荷台に酒の樽を2つ乗せる。これは中身が入っている。
幸太郎はギブルスに『特に香りがいいもの』と頼んでおいた。酒の樽は
開けていないのにいい香りがする。
幸太郎は全く酒を飲まないが、この香りには満足した。
「うむ・・・ワインは生き物なんだ。
保存が悪いとすぐにワインは死んでしまうんだ・・・」
幸太郎はカッコつけてうんちくを話した。
「これ、ブランデーです」
「・・・」
「・・・」
微妙な雰囲気が流れた。
「『コール・ゾンビ』・・・」 キリッ
幸太郎は『無かった』ことにした。
荷車は大きいので樽が2つだけだとガラガラだが仕方ない。
車輪の下に木片をかませて動かないようにする。
幸太郎はゾンビ2体を召喚。
2体に服と靴、黒いフード付きの上着を着せた。
ありがとう、盗賊と人狩りの諸君。
幸太郎はゾンビに手順をイメージで伝える。
ゾンビは『こくこく』とうなずく。
モコは不覚にも素直にちまちまとうなずくゾンビを可愛いと思ってしまった。
「よし、では始める」
幸太郎はゾンビ2体に盗賊の剣を持たせた。そして、仮面を取り付ける。
ゾンビはうなずくと剣を振りかざして、
エルロー辺境伯の屋敷の門へ走っていった。
「いくぞ、モコ」
幸太郎とモコはそろそろと荷車を押して、門が見える位置につく。
ゾンビは屋敷の鉄格子の門へとりつくと、
ガシャガシャと揺さぶり、剣で叩いた。
「おい! 貴様何をしている!」
早速、警備の者が数人飛んできた。
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