行動開始
予定の7時が近づいた。ジャンジャックたちは順調に釣れているだろうか?
スマホも無線もないこの世界では、確認のしようがない。
しかし、それはエルロー辺境伯や警備のやつらも同じこと。
情報で相手を振り回すほうが有利なのは間違いない。
幸太郎とモコはフードのついた上着を着る。
これは人狩りから奪ったものだ。
ギブルスの考えたルートを頭に入れたことを確認する。
地図は持っていかない。
この世界の紙は分厚い。しかも、硬い。まだまだ発展途上なのだろう。
携帯には向かない。そして万が一落としたりすると、
その地図からギブルスにたどり着かないとも限らない。
なにせ『コピー』が無いので、どうしても
一枚一枚微妙に違う。ただでさえ危険なことをするのだ。
これ以上不安要素は増やせない。
「じゃあ、行こうか。モコ」
「はい。ご主人様」
「幸太郎。わしは例の地点で使用人を連れて待っておる。幸運を祈るぞ」
行動開始。
幸太郎とモコはエルロー辺境伯の屋敷のそばに近づいた。
モコの耳で周囲に人がいないことを確認する。
ギブルスの言う通り、幸太郎のいる地点は周囲の
建物のドアからも窓からも影になっている。
「・・・なんで、こんな場所をギブルスさんはマークしているんだ?」
「さあ・・・。私にはさっぱり・・・」
もしかしたら、いつの日か、こんな日が来ると
ギブルスは思っていたのかもしれない。
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