少し寝るか
「7時まであと1時間ちょっとあるか。少し寝るかな・・・」
幸太郎は『時計塔』でベッドを作る。
わずかな時間のあと、寝息が聞こえてきた。
「ほっほ、この状況で寝ることができるか。大した神経しとるわい」
これは幸太郎がブラック企業に勤めていたことに起因する。
わずかな時間でも、どんな状況でも寝ることができた。
ブラック企業ではそうしないと、本当に死にかねないのだ。
そして、実際にできない奴は重病になった。
モコはさすがに眠れない。子供たちが気になって、
今すぐにでも襲撃をかけたい気分だった。
だが、全てが夜の闇に包まれるまでは待つ必要がある。
仕方ないので、モコは椅子を並べて幸太郎のマネをして横になった。
寝ている幸太郎を見ると、なんとなく落ち着いた。
(ご主人様の計画なら間違いない・・・。
今の私がしなくてはならないのは
計画を狂わせないようにすること・・・)
しばらくすると、いい匂いが漂ってきた。
ギブルスがスープを用意したのだ。
「気が利くな。行動の前に満腹になると動きが鈍る。スープだけでいい」
いつの間にか幸太郎が起きていた。いよいよだ。モコは気合を入れた。
スープをカップで飲みながら、手順を確認する。
特に変更はない。唯一、
魔導士をおびき寄せるセリフを追加しただけだ。
「魔導士2人とも呼び寄せることができれば、言うことなしだが・・・。
来てくれるのは1人だけだろう。カルタスたちに任せるしかないな。
モコ、俺たちは戦わなくていい。とにかく死体を敷地に放り込んで
鉄格子の門を閉めるだけだ」
「はい。私の出番は屋敷に突入してからですね」
「ああ、できればメイドたちは殺したくない。ここはモコの
『ラピッド・スピード』に期待する。
実力差さえ見せつければ、必ず大人しくなるはすだ」
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