夜が来る
ジャンジャックとグレゴリオは
『ピートス川』にかかる橋までやってきた。
この川に架かっている橋は、大きな中州を真ん中にして2分割されている。
一応護岸工事はされていた。商人ギルドの力の証拠だ。
この橋は『バルド王国』も『ジャンバ王国』も非公認であった。
両国とも先の戦争の終結を宣言していないため、
公には橋をかけるわけにはいかない。
そこで、商人ギルドと冒険者ギルドが共同で『勝手に』
橋を架けているという、奇妙な有様だった。
もちろん、両国とも橋を普通に利用している。
『建前』とは時に馬鹿馬鹿しい状況を作り出す。
「さあて、まずは急いで魚を釣って準備を完成させねえとな」
「頼むぞ、ジャンジャック。俺はあんまり釣りが得意ではないからな」
「任せとけって!」
ジャンジャックとグレゴリオは、
屋台で買ったパンの一部を丸めて針につける。
ほどなくして、ウキが沈んだ。ジャンジャックは
一発できれいに引き上げた。
「ちょっと小さいが・・・、まあ問題ない」
「早い。さすがだな。よし、俺は計画通り、魚をさばいて切り身を作る。
・・・そうだな、もう焚火の準備もしておくか」
グレゴリオはマジックボックスから包丁とまな板を取り出した。
大雑把ではあるが、切り身を作る。
ジャンジャックはそれを針につけて投げ込んだ。
さらにグレゴリオは、橋の袂から少し離れた
河口側に枯れ木などを集め始める。
「よしきた、2匹目! こいつは、まあまあのサイズだぜ」
「順調だな。最低でも大小あわせて20匹以上が望ましい。
小さいのも釣れよ?」
「そいつは魚に頼んでくれよ。よっと・・・。
では早速、魚籠に入れておくか」
ジャンジャックは魚籠にロープを付けて川に漬けておく。
生きててもらわないと困るのだ。
グレゴリオが『着火』で火を起こす。
夕暮れの中、ほのかに辺りを照らし始めた。
「夜が・・・来る・・・」
薄暮のなか、グレゴリオはわずかに明るい水平線をしばし見つめた。
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