ただの変態じゃなかった
ジャンジャックとグレゴリオが門を開けて入ってきた。
手には釣り竿と大きな魚籠を持っている。
「おお! ジャンジャック! こいつ面白いぞ!
変わった知識を持っておる!
初めて、この石の頭蓋骨の価値を正確に知る人間に出会ったわい!」
「お、おお・・・。それはよかったなジジイ・・・。
で、幸太郎、首尾は? ブロトから子供たちの居場所は聞き出せたのか?」
幸太郎が答える前にギブルスが勝手に答えた。
「首尾は上々。子供たちはエルロー辺境伯の屋敷におる。
子供たちは昼前に防壁の門から入ってきて、
ブロトの商館へ運び込まれた。その後すぐに
エルロー辺境伯の屋敷へ連れ去られたようじゃ」
幸太郎は目を見開いて、ちょっとあっけにとられた。
え? なんか詳しいけど。
ギブルスは幸太郎の顔を見て察したようだ。説明を始めた。
「別にわしがブロトの仲間なわけではないぞ。
わしは商売柄、耳が早い。昼前に『特別許可』で
防壁を通過した馬車の話は知っておる。その馬車が
ブロトの商館の裏口に入っていったこともな。
幸太郎はギルドの傭兵掲示板の前で
のんびりとそっちの娘と話をしておった。焦った様子は微塵もない。
つまり、全て情報は手に入り、なおかつ全て予想通りで
作戦に変更を加える必要はないってことじゃよ」
幸太郎はあんぐりと口をあけた。
なんてこった! ただの変態じゃなかった!
グレゴリオがそのバカでかいグローブみたいな手を、
幸太郎の肩に置いた。
「まあ・・・。こういう御仁でな」苦笑する。
「まいったよ・・・」幸太郎も苦笑した。
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