ムラサキ登場
アステラが冷蔵庫を開ける。普通の冷蔵庫にしか見えない。
アステラは何か皿を取り出して、床に置き始めた。
幸太郎はアステラのお尻に釘付けになっていたが、『神の冷蔵庫』の中身にも
興味があったので、上体を傾けて冷蔵庫の中をのぞいてみた。
冷蔵庫の中にはスーパードライとサラミしか入っていなかった・・・。
(だめだこいつ・・・。早くなんとかしないと・・・)幸太郎の額から
汗が流れた。
アステラは冷蔵庫から5枚の皿を取り出してちゃぶ台に載せた。
4枚は食べ物だったが最後の皿はなぜか『がま口財布』が
ちんまりと載っていた。なんで冷蔵庫に・・・。
その時ふいにチャイムが鳴った。ほんとうに『ピンポーン』という呼び鈴の音だ。
「あ、ムラサキ? 入ってきて」
アステラが玄関へ声をかけると、玄関のドアが開いて
ポニーテールの女性が入ってきた。
「お待たせしました、アステラ様。あ、幸太郎君ね。
初めまして、私はムラサキです」
ムラサキと名乗る女性がペコリとお辞儀する。幸太郎もペコリとお辞儀した。
「初めまして。幸太郎と申します」
「アステラ様。説明はどこまで・・・って、なんて恰好してるんですか・・・
無防備すぎますよ・・・」
「いーのよ。どうせここには幸太郎しかいないんだから」
「それもそうですね」ムラサキはけろっと言った。
幸太郎はなぜか少し傷ついた。ほろり
ムラサキはちゃぶ台の上を見て大体の状況は飲み込めたらしい。
「幸太郎君、ごめんなさいね。いきなり大変なお願いを聞いてもらって・・・」
「あ、いえ、いいんですよ。事情はアステラ様から大体聞きました。
前任者の話も」
「彼ね・・・。あのあとアステラ様と話し合ったの。
今度は『普通の人』をアマテラス様にお願いしようって・・・」
「ははは。まあでも、おかげで少なくとも一人成仏させたら前任者より
お役に立つって自信がつきましたよ」
「で、ムラサキ。あれの準備はできたのね?」
「はい。幸太郎君に渡せるように太陽魔法を調整してきました。
色々と旅には便利なはずです」
「よーし。じゃあ幸太郎の旅に必要な魔法とスキルを渡すとしましょうか」
アステラは にまっと笑った。
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