変人だ
「さあ、わしの店へ行こう。大まかな話は
ジャンジャックたちから聞いておるよ。
お前さんが欲しいものも揃えてある。まあ、話は店で聞こうかの」
ギブルスはこの『商業都市ユタ』に複数の店を持っているという。
食料品から雑貨、服飾、貴金属まで店がある。手広い。
その中で貴金属の店へ案内された。ここは貴族の居住区に近い。
まあ、客層が貴族ばかりなのだから当たり前か。そして、
意外なことにブロトの商館が同じ通りにあった。割と近い。
「この店は貴金属を扱っておるため、
一番奥の屋敷までは4つの門を通らねばならん。
この屋敷は内緒話にはうってつけじゃよ」
「・・・。失礼ですが、話はどこまで聞いておられますか?」
「ジャンジャックたちが知ってることは全部聞いておるよ。
エルロー辺境伯をぶちのめすんじゃろ? 面白そうじゃないか。
ああ、あいつらを責めるなよ? 話を聞かなきゃ、わしは協力せん。
わしは自分が興味あることしか動かないからのう」
「どうして・・・子供たちの救出に協力する気になったのですか?」
「面白そうじゃから!!
それ以外になにか理由がいるのかね? ひっひっひ」
『面白そう』だけで、王国の国境を任されてる大物貴族をぶちのめす
手伝いをする気なのか・・・。しかも、それがどんな事件になるかも
理解した上で、言ってるらしい。
幸太郎のいた現代の日本の善悪などを持ち込んでも、
この世界では通用しないのだろう。
(ギブルスさんは・・・
この国への忠誠心みたいなものが無いんだろう・・・。
単純に自分の好奇心だけが判断基準なんだ・・・。
これから起きる大騒動も
死人が出るだろうことも全然気にしてない。
自分で見たいだけのようだな・・・。まあ、むしろありがたい。)
なるほど、これは『変人』だ。幸太郎は内心苦笑した。
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