ギルドの中
幸太郎はこの世界へ降りてきて、まだ一度も魔物を見ていない。
しかし、成仏行脚を続けていれば、必ず出くわすだろう。
自分の世界にはいなかった存在。
この世界にどんな影響を及ぼしているのだろう?
モコと買い食いしながら歩いているとギルドが見えてきた。
「もも、もへら、もうへんはいるもなもはま?」
「はえ、はもはんはんら、はんへんははももへふ」
二人とも吹きだして笑った。
冒険者ギルドの建物が見える。
剣と盾のマーク。まあ直球の看板。
武器屋は樽の中に剣のマークが一般的だという。
冒険者ギルドの入り口に近づくと、いかつい男たちや、
傷のあるやつらが増えてきた。
幸太郎とモコをジロジロ見てくるのが、ちょっと怖い。
ギルドの建物の中に入ると、正面奥にカウンター、右と左に掲示板がある。
幸太郎は素早く鑑定を使った。
「いらっしゃいませ! どのようなご用件でしょうか?」
カウンターの女性が声をかけてくる。
ずいぶん遠くから声をかけてくるなあ、と幸太郎は思った。
だが、周囲の反応を見て意味がわかった。
カウンターの女性は幸太郎たちが、荒くれ者たちに
絡まれないように気を使ってくれたのだ。
幸太郎は『傭兵掲示板』を指さして、軽くお辞儀をした。
カウンターの女性が
『必要がございましたら声をかけて下さい』と言って業務へ戻った。
とたんに周囲の荒くれ者たちがスーっと遠ざかっていく。
『客』と認識されたのだ。
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