モコと雑談 5
「それで、尾行はついてるか?」
「はい、予想通り尾行はついてます。ですが・・・1人だけです。
これは予想外です。しかも下手すぎです。
立ち止まって、さささっと足音がして、
また立ち止まる・・・。おそらく周囲の人たちも
思いっきり不審に思ってると思います・・・」
「うわあ・・・。モコ、がんばって気が付かないふりをしような・・・。
気が付いてるのがバレると予定が狂う。しかし、朗報でもあるな。
まともな人狩りや商館の使用人は、
全員待ち伏せの準備に回ってるってことだ」
「そうですね。私たちがギブルスさんのところに入って、
日が暮れるまでは、ついてきてもらわないと」
この世界の町は夜になると門が閉まる。
そして、夜間は基本的に何が起きても門は開けない。
・・・夜が暗いからだ。
防壁にかがり火を焚いていたとしても、大した視界は無い。
もしも盗賊が町を襲撃しようとしていた場合、
盗賊に目と鼻の先まで接近されないと視認できない。
つまり、手遅れな距離までは誰でも簡単に
町に近づくことができるのだ。
逆に、夜になって門が閉まれば、防壁を超えない限り外へは出れない。
尾行は門が閉まればいなくなる。彼らが気にしているのは、
幸太郎たちが『いつ外へ出るか』だから、
一晩中監視している意味は無い。
自ら『幸太郎たちの監視を中断する』
つまり、完全に幸太郎たちはフリーになる。
エルロー辺境伯の屋敷を襲撃するには必須条件。
(C)雨男 2021/12/01 ALL RIGHTS RESERVED




