奴隷商人の館 15
「まあ、一種のペテンですな。相手に判断できる材料を与えない。
相手が判断する前に消える。しかし、効果は絶大です」
「うーむ。いや、これは参考になりますな。
うちの商売も色々と危険はつきものですから。
さっきのエリックに何か仕込みましょう」
「しかし、過信は禁物です。なにしろ、私自身が強いわけではないのです。
最初から大勢で取り囲まれたら、どうしようもありません。
まあ・・・。私一人に大勢で取り囲むような暇な盗賊など、
いませんでしょうけどね。採算が合わないですよ。ははは」
幸太郎はここで立ち上がり、ブロトに感謝の言葉を述べると
『今から用事を片付けて、出発の準備をする』と商館をあとにした。
商館を出てから100メートルほどの所で、幸太郎は立ち止まった。
口をパクパクさせて、無言でモコに何か説教するふりだけをする。
モコは目を閉じて聞き耳を立てた。
しばらくすると。
「・・・聞こえました。確かに『待ち伏せ』という言葉が出ました」
「よしよし。まんまと罠にはまってくれたようだな。
じゃあ、今度は冒険者ギルドだな。
・・・モコ、いい演技だった。
よく自分を抑えて演じ切ってくれたな。ありがとう」
モコはちょっと泣きそうになった。
『なんで? お礼を言うのは私のほうなのに』
情報は入手できた。子供たちはエルロー辺境伯のところだ。
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