奴隷商人の館 10
「ほほう・・・。やはり、いい拾い物だったようです。
ふむ・・・これはもしかすると・・・」
幸太郎は少し考え込むふりをした。
そして、テーブルにパチリと金貨を一枚置いた。
「おや? これは何の・・・?」
「ブロト殿、実はずっと考えていたのですよ。
なぜ、この娘はあんな川岸に1人で倒れていたのか・・・とね。
もしかすると、この娘の村が盗賊か人狩りに襲われたのではないか?
それでこの娘だけ命からがら逃げだして、
川へ飛び込んだ・・・。それを私が偶然発見した・・・」
幸太郎はここでニヤッと笑う。
「もし、この推測が当たっているのならば、この娘の村の者が何人か、
ユタやコナへ運び込まれているのでは? ブロト殿、いかがですか?
この商館にも持ち込まれた者はいますか?」
「残念ながら、それにお答えすることはできませんな」
「いえいえ、お答えいただく必要はありません。
しかし、うっかり独り言をつぶやいてしまう・・・。
そんなこともたまにはあるでしょう?
私とて同じですよ。うっかり、この金貨を忘れて
帰ってしまうことがあるかもしれません」
(C)雨男 2021/12/01 ALL RIGHTS RESERVED




