奴隷商人の館 8
「ほう? 金貨20枚ですか」
「はい。お手持ちはございますか?」
幸太郎は見え透いた手だと思った。吹っ掛けて、
もし、所持金が足りなければ、
モコを奪ってお釣りをだすという作戦なのだろう。
やはりブロトはモコを諦めていないという証拠だった。
「ふーむ、妙な話ですなあ・・・」
幸太郎は余裕たっぷりにソファに深く腰掛ける。
「おや、妙・・・とは?」
「いや、なに。私はギブルス殿にここを
紹介してもらったのですがね・・・」
幸太郎はニヤリと笑った。
ブロトはビクッとわずかに顔が動いた。
「そ、そうでしたか。それを早く言っていただければ・・・。
お人が悪い。それでしたら、割引価格でご提供いたします。
金貨10枚で結構でございます」
「おやおや、急に半額とは・・・。いかがいたしましたか?」
「いやはや、これはお見苦しい所を。
そ、その、今の20枚という金額は・・・。
そう、初見のお客様には防犯もかねて、あえて、
高額の料金を設定しているのですよ。
なにせ商売柄、恨みを買うことも、多々ありますゆえ・・・」
説明になってない。幸太郎はそう思ったが、
追い詰めることはしない。
なにしろ幸太郎はカマをかけただけで、相場など知らないのだ。
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