奴隷商人の館 6
「この娘をですか? いや、大変ありがたい話ですが、
すでに売るあてがありましてね」
「ほう。もし、差し支えなければ、
そのあてをお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ダブリンの『デーブルス伯爵』様です。
ふふ、実は、この娘を介抱したときに・・・
すでに頂いてしまったのです。もうこの娘は生娘ではありません。
しかし、デーブルス伯爵様は、このような娘が
お好きだと聞いたことがございましてな」
「なるほど、デーブルス伯爵様ですか。確かにあのお方は、
様々な種族に対して博愛に満ちた振る舞いをなさる、
と聞き及んでおります」
「まあ、直接ではないのですが、デーブルス伯爵様に
渡りをつける算段があるのです。
この娘なら、きっと高く買っていただけるでしょう」
「ふむ。実は私共もデーブルス伯爵様には伝手がございます。
どうでしょう。金貨70枚・・・いや、80枚出しますが・・・」
「これはこれは、高い評価を・・・。
しかし、ありがたい話ですが、やはり今後の商売を考えると、
ここでデーブルス伯爵様の関心を買っておきたいのですよ。
申し訳ありませんね」
「うーむ、そうですか、それは仕方ありませんね。残念です」
ドアをノックする音がした。
メイドがトレイに『隷属の首輪』を載せて入ってきた。
「準備ができたようです。ではそちらの娘に装着しましょう」
(C)雨男 2021/12/01 ALL RIGHTS RESERVED