奴隷商人の館 5
しばらくして、応接室のドアが開いた。
「初めまして。当、商館へようこそお越しくださいました。
私は商館の主、ブロトと申します。コウタロウ・ミツヤ様ですね?
以後、よろしくお願いいたします」
身なりはいいが、油断のならない顔だと幸太郎は思った。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。ブロト殿。
お時間をとらせて申し訳ないが、今日こちらへ来たのは・・・」
「うかがっております。そちらの獣人の娘に
『隷属の首輪』をつけたい・・・ということですね?」
「左様。この娘がピートス川の川岸に倒れている所を見つけましてな。
私が介抱して、命を救ったのです。
それで、この娘はお礼に是非、自分を奴隷にしてほしい、と
懇願してきたのですよ。・・・そうだな? モコ?」
「はい。私は命を救っていただいた恩義に報いるために、
ご主人様の奴隷になりたいと思います。
それ以外に御恩に報いる方法が私にはございません」
モコはそう言うと、口を強く結んでうつむいた。
「ほう。義理堅い娘のようですなあ。いや、うらやましいくらいです。
・・・うーむ、それにしても良い娘ですな。
幸太郎様、ものは相談ですが、
この娘を私共に譲っていただくわけにはいきませんか?」
来たな、と幸太郎は思った。そして、
『別の可能性』が正しいと確信した。もう間違いない。
幸太郎はシナリオの書き換えを始めた。
(C)雨男 2021/12/01 ALL RIGHTS RESERVED