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奴隷商人の館 4
モコが目を開けた。幸太郎はズボンのしわを少し気にするふりをして、
腰を曲げた。モコが小声でささやく。
「幸太郎様の予想どおりです」
ここまでは予想通り。しかし、
幸太郎は頭の中で他の可能性を考えていた。
しかも、おそらくそっちが正しいと軌道修正を始めていた。
エリックが再び門に現れた。主が首輪の準備をするので、
応接室でお待ち頂きたいと告げる。
「では、お言葉に甘えて、待たせてもらいましょう」
幸太郎はあえて、モコの手錠につけた紐を引っ張る。
モコがかすかによろけた。
いい演技だ。練習の成果がでていると幸太郎は満足した。
応接室に通された幸太郎は、豪華な造りのソファに座った。
モコは練習通り、幸太郎の後ろあたりに俯き加減で立っている。
幸太郎の分だけ、お茶が運ばれてきた。
紅茶にリンゴの皮を入れたような香りがする。
幸太郎は念のため鑑定をした。毒は入っているか?
実力行使するなら、まずは必ずここを狙うはずだ。
『紅茶とリンゴの皮のお茶 毒は入ってない』
やはり、鑑定は優秀だ。ありがたやー。
(C)雨男 2021/12/01 ALL RIGHTS RESERVED