奴隷商人の館 2
奴隷商人の館の使用人と思しき、若い男は笑顔を浮かべている。
(結構・・・場数を踏んでいる、
ビジネスの修羅場をくぐったことがある顔だな・・・。
若いが番頭クラスかもしれん)
「当、商館へようこそ。私は商館の主『ブロト』の
使用人でエリックと申します。
本日は、どのようなご用向きでございますか?」
「ご丁寧な応対に感謝します。私はコウタロウ・ミツヤと申します。
今日は、この獣人の娘に『隷属の首輪』を
つけてもらいたいと思いましてな」
幸太郎は、あえて苗字まで名乗った。もちろんハッタリ。
幸太郎はチラッとモコの目を見た。大丈夫そうだ。
幸太郎はモコの頭を覆っているフードを下ろした。
モコのもこもこした髪と獣人の耳があらわになる。
「!!・・・。 小狼族の娘ですね。これは美人だ。
ご用件は、この娘に『隷属の首輪』を付けたいということですね?
では主人に取り次ぎますので少々、お待ちください」
エリックは、ほんのかすかに驚きの表情が浮かんだ。
営業モードの幸太郎はもちろん見逃さなかった。
やはりユタに入った人狩りのチームから
情報は聞いているのだろう。予想通りだ。
しかし・・・。幸太郎は胸がざわついた。
(・・・妙だ・・・何かひっかかる・・・。
これはアドリブを加える必要があるかもな・・・)
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