ギルドカードは無いよ
幸太郎はモコに手錠をかけた。これは人狩りから奪ってきたものだ。
モコは演技を開始する。門の番兵が『次!』と呼んだ。
「どうも。守衛さん。私たちは商売でここへ来ました。
滞在予定は2,3日です」
「商人か。見ない顔だな。ギルドカードはあるか?」
「いいえ、私は持っておりません。正式な商人ではないのです」
「何? 商人ギルドに所属していないのに商売だと・・・?
怪しいな・・・」
「ふふ、そう警戒しないで下さい。
私がギルドカードを持っていないのはわざと、なんですよ。
あえてギルドに所属していないのです」
「ん? それはいったいどういう意味だ?」
「私の一番のお得意様は『ギブルス』殿なんですよ。
これで、おわかりいただけましたか?」
「ああ・・・。そういうことか。あの変人が怪しいものを
仕入れるためのギルドを介さない『非正規ルート』ってことだな。
まったく困った人だぜ」
「そのようですな。・・・ところで、私はしばらく
山と森のほうへ行っていたので、ユタは数年ぶりなのですが・・・
あまり変わってはいないようですなあ」
「良くも、悪くも、な。何しろ知っての通り、
未だに『バルド王国』は金が無い。
町に変化なんかありはしないさ」
「なるほど・・・。それはお困りでしょうなあ。
そうだ、通行料を払っておきましょう」
幸太郎は金貨を『4枚』渡した。
(C)雨男 2021/11/30 ALL RIGHTS RESERVED