3時間半くらいで
幸太郎はジャンジャックの後ろで、ぼんやりと遠くのユタを眺めた。
幸太郎はこれからのこと・・・とは全然関係ないことを考えていた。
(ユタ・・・ね。俺にとってはアメリカのユタ州のイメージが強いけど。
それを言うなら『バルド王国』の首都『ダブリン』か。
俺のいた地球でも複数のダブリンって都市があったはずだよな。
グレゴリオって名前は『グレゴリオ聖歌』をどうしても思い出す・・・。
やっぱり中世ヨーロッパみたいな文化に近いってことか?
宇宙は違えども、やっぱりここも『地球』なんだなあ・・・)
そして、ユタの防壁を見て、幸太郎はいつものアレを思った。
(それにしても・・・この世界で初めて見る町が、
悪者から子供たちを奪い返す作戦オンリーの用事とは・・・)
溜息ついていいですか?
ジャンジャックがボートを砂地の岸へつけた。
遠くに町の門が見える。番兵も。
「幸太郎、ここからは歩きだ。不審に思われるかもしれない」
モコは作戦通り、人狩りから奪ったフード付きの上着を着る。
昨夜の打ち合わせと練習を思い出しているようだ。
幸太郎は『時計塔』を呼んでみた。なんと1時半! 早い!
馬車で1日、歩きなら途中で1泊を覚悟する距離を3時間半で
下ってきたのだ。上出来どころではない。幸太郎は決めた。
(今日、エルロー辺境伯をぶちのめして、子供たちは奪還する)
(C)雨男 2021/11/28 ALL RIGHTS RESERVED