死して、なおも
10分たった。正直なところ、
最後まで普通に維持できて幸太郎は驚いた。
しかし、これは自分の力ではないように思えた。
「みなさん。10分経ちました。これより、彼らを天へお送りいたします」
村人はみんな泣き笑いの表情でうなずいた。モコも目が赤い。
幸太郎は亡くなった人たちの魂へ向き直った。
幸太郎の目から不意に涙がこぼれた。
亡くなった人たちはみんな笑顔だった。もちろん無理をしているのだ。
自分たちが泣いていたら、残った人たちも涙が止まらないだろう。
彼らは、死してなお、後の人たちの幸せを願い、
励まそうとしているのだ。
彼らは死して、なおも。死して、なおも。
「『レスト・イン・ピース』・・・」
亡くなった人たちは光の粉になって、空へ昇っていった。
幸太郎は自分でも気が付かないうちに
『いつの日か』を歌っていた。
無意識だった。おそらく祈りの代わりだったのだろう。心からの。
村人たちは全員、幸太郎の後ろから合掌していた。
静かに、静かに涙を流していた。
『・・・許さん・・・』
幸太郎の目からは怒りの涙がこぼれた。
(C)雨男 2021/11/28 ALL RIGHTS RESERVED