宗教
「ところで、ついでに地上の宗教について聞いてもいいですか?」
「あー。オーガス教とリーブラ教ね」
「悪魔がご本尊ってどんな宗教になってるんですか? 私は出会ったら
逃げたほうがいいですか?」
「逃げる必要はないわね。意外に思うかもしれないけど、一見まともな
フツーの宗教よ。それなりにまともな教義を掲げているし、
社会の秩序を維持するのにも役に立っているわ。教会もあれば、慈善活動もする」
「悪魔なのに?」
「悪魔だから、よ。悪魔は世界の破滅なんて望まないわ。
人々がのたうち回るのが楽しいんだもの」
「・・・。つまり、人類に秩序をもたらし、天使の顔をして人々を
助けるふりをしながら、裏で人々が争い、長く苦しむように
コントロールしているわけですか?」
「まあ、そんな感じ。人類が絶滅したら悪魔はヒマになるでしょ?」
「アステラ様の力で悪魔をやっつけることはできないのですか?」
「やっていいなら、とっくにやってるわよ! 本音を言えば
今すぐ降りていって消滅させてやりたいわよ!」
「でも直接介入は禁止、そして地上が巻き添えになるから・・・ですか?」
「そーよ! 悪魔もそれはわかってんのよ・・・むかつく・・・。おかげで
オーガス教とリーブラ教は野放しになってるわ。あいつらの信者の中には
無茶苦茶なことを広めているやつらもいるのよ・・・」
『夜の裏道で人を襲って殺した。金品を奪った。しかし私は見つからなかった。
捕まらなかった。つまり、この行いは神がお認めになった。神がお許しに
ならないのであれば、私は捕まっていたはずだ』
「ふ・ざ・け・ん・な! っつーーの!! あいつら神をなんだと
思ってやがんのよ! そんな行いをあたしらが喜ぶわけないだろーーが!!
直接介入できないだけで認めているわけじゃないのよ!」
アステラは床に仰向けに倒れてジタジタと暴れた。
パンツ見えてます、アステラ様。
幸太郎はネテロ会長並みに美しい所作で合掌して、心の中で叫んだ。
(ごっつあんです!!!) キリッ
(C)雨男 2021/10/31 ALL RIGHTS RESERVED