前任者 3
「それはまた・・・前任者は壮絶な最期でしたね・・・」
「まあ、さすがに私もムラサキも頭にきたから、
一緒に彼に説教くれてやろうと思ったの」
ところがね、と言ってアステラはまた溜息をついた。
「アンドリューをこっちに連れ戻したとたんに、
彼は私たちを大声で罵りだしたのよ」
『なんで助けてくれなかったんだ! おかげで痛い思いをしたじゃないか!
あそこで助けてくれてたら、神の奇跡を無知蒙昧な原始人に示せたのに!
布教が台無しだ! さあ! 早く生き返らせてくれ! 復活の奇跡を見せて
私は地上で聖人になるのだ!!』
「これには、私もムラサキも唖然としたわよ・・・。
本気で言葉が出なかったわね・・・」
「アステラ様から依頼された仕事を完全に忘れてますね・・・は、はは・・・」
「アンドリューが喚き散らしていたら、アマテラス先輩がひょっこり現れて
彼をつまんで連れて行ったわ。それっきり彼の行方は知らない。
知りたくもないけどね」
アステラはふと思った。もしかしたらアマテラス先輩はこうなることを
最初から見越していたのではないか、と。
「・・・ステラ様? アステラ様? どうかなさいましたか?」
「え? ああ、ごめん。ちょっと考え事してた」
「お疲れ様です。でもこのことだったんですね。
『今回はちゃんと説明する』って言ってたのは」
「うん。アンドリューの時は彼の言葉を信用しすぎて、ろくすっぽ説明もせずに
地上に降ろしてあの有様だったからね・・・。もっとしっかり説明していたら、
違う結果になっていたかもしれないわ。
まあ、別にアンドリューが布教してもいいのよ?
当初の目的さえ遂行してくれていたらね。大変な役目を頼んでいるんだもの、
それ以外では好きに人生を生きていいわよ」
「私は説明を聞けて良かったですよ。別の宇宙へ来た話とか。少なくとも
アステラ様の御用をほっぽりだしてしまうことは無いとお約束します」
「ありがとう。そういってもらえると嬉しいわ。アンドリューの件は
私もムラサキも大いに反省しているとこだから・・・」
神様も悩んだり、苦しんだりするんだなあ・・・と、幸太郎は同情した。
(C)雨男 2021/10/31 ALL RIGHTS RESERVED