村人の部隊は邪魔
すでに昨夜、幸太郎はおおよその作戦を決めていた。
もちろん不確定な部分が多くて、実際には難題が山積みではあるが。
だが、つまるところ最後に必要なのは
『脱出方法』と『どこへ逃げるか』である。
幸太郎がまずモコの村へやってきたのは
『村人がどこへ逃げたのか』が
どうしても知りたかったからだ。
村人が何人か家財道具を取りに戻ってくるか、
亡くなった人の埋葬に戻ってくるはず、
という幸太郎の予想は当たった。
『村人はアルカ大森林へ逃げた』
子供たちをどこへ送り届ければいいのかは分かった。
次は『脱出方法』。しかし、これは幸太郎とモコ、
そして子供たちを町から逃がすには、
少人数である必要がある。はっきり言えば村人がついてくると、
幸太郎は庇う人数が増えて動けなくなる。
『救出』に来たことがバレたら、見た目で判別できる以上、
小狼族は全て見境なしに殺されるだろう。
だから、村人の部隊は邪魔でしかない。
幸太郎は最後の『脱出方法』から逆算して計画を立てていた。
別に何も仰天するような奇策など無い。いたって普通の、
何の変哲もない、面白くもなんともない計画だ。
幸太郎はスーパーマンではない。スペースオペラの主役になれない。
危機一髪も救えない。ただの人だ。
(C)雨男 2021/11/25 ALL RIGHTS RESERVED