モコが村へ帰ってきた
さすがに幸太郎の目にも村が見えてきた。煙は見えないが、
わずかに焦げた臭いが漂っている。
この世界に来て、初めて目にする村が焼けた村か・・・。
溜息つきたいけど、それどころじゃない。
遠くに人影が見えた。予想通り村の人達が何人か戻ってきているようだ。
「シバさん! 私です、モコです!」
モコは馬を飛び降りると、村人たちの所へ走って行った。
「モコちゃん! 無事だったのか! 良かった!
人狩りから逃げることができたんだな!」
「はい、あちらの幸太郎様が助けてくれたんです!」
モコは振り返った。しかし、幸太郎がいない。
泣きそうな顔をした幸太郎を乗せたまま、
馬は村をスルーして遠ざかっていくところだった。
『モコぉ~・・・』という情けない声が聞こえる。
「あわわわ、そうでした、幸太郎様はひとりで
馬から降りれないんでした!」
モコが慌てて馬を呼びながら、追いかける。
村人たちはしばらくポカンとしていたが、
今のは見なかったことにして
「よ、よし! モコちゃんが無事だったことを喜ぼう!」
「お、おう、そうだな! 親父さんにも教えてやらないとな!」
皆でモコの帰還を喜んだ。
(C)雨男 2021/11/25 ALL RIGHTS RESERVED