なでなで
幸太郎は驚いて、モコの頭を見た。誰かの手がモコの頭に乗っている。
しかも、驚くべきことに、その手をたどると自分の左肩に接続されていた。
(なん・・・だと・・・?)
いつの間にか、幸太郎の左手は勝手にモコの頭をなでていたのだ。
(ば、バカな! 左手が俺の意志を無視して、勝手に!)んなわけない
「いや、ご、ごめん。つい、モコが可愛いから」
「え! そ、そうですか・・・あり、がとう、ございます・・・」
モコが照れた。凄まじい破壊力。
幸太郎は再び自分のももをつねった。異世界恐るべし!
「よ、よーし、それじゃ、ぼちぼち、出発しようか?」
「は、ははい、そうですね。行きましょう」
休憩は時間にしてたった10分だった。
しかし、休憩に入る前と、今では
だいぶ気持ちの持ちように変化が起きた。
幸太郎は休憩して良かったと思った。
焦る気持ちのままでは正常な判断はできない。
相手は有力な貴族。気持ばかり先走ってはこちらが全滅しかねない。
それから1時間ほど馬を進めると、モコが馬を駆け足にさせた。
「あれです! あれが私の村です!」
正直なところ、幸太郎にはまだ村がどれだかわかっていない。
しかし、モコは馬を矢のように一直線に走らせた。
(C)雨男 2021/11/25 ALL RIGHTS RESERVED