カカカロのパン
しばらく走ったところで、幸太郎は休憩を提案した。
朝からまだ何も食べてないこともあったが、
モコに明らかな焦りのようなものが見えたからだ。
実は幸太郎も少し気が急いていた。
焦りはよくない。どの道、この先ユタまで長い。
焦りに耐える訓練が必要。子供たちを救出するために。
幸太郎は時計塔でベンチを作った。『飲料水』で水を出す。
昨日食べた中で、一番おいしかったと思ったのはパンだった。
少し甘くて、硬めだが食べやすい。
鑑定したら『カカカロのパン』と表示された。
「このパンって、あのカカカの実を使ったパンなの?」
「そうですね。旅人には人気の保存食です。
カカカの実は生ではとても渋いのですが、
干すと渋みが抜けます。そのあと水でもどして種を抜きます。
あとはすりつぶして小麦粉と混ぜてパンにします。
焼しめてもあまり硬くならないので
人族には食べやすいはずです。そして、そのパンはかなり長持ちします」
「そうか、栄養価が高くて、少し甘い。
これは旅行者には人気が出るわけだ」
幸太郎はモコにはパンと干し肉を出した。相変わらずモコは干し肉を
『バツン』と軽々噛み切る。
幸太郎は食べながら、子供たちをユタから脱出させるのに
必要なものを考えていた。
売っているのか? いくらぐらいするのか?
強行手段はあまりとりたくない。幸太郎がぼんやり考えていると
モコが幸太郎に話しかけてきた。
「あ、あの・・・あんまり頭をなでられると、
照れてしまいます・・・」
「へ?」
(C)雨男 2021/11/25 ALL RIGHTS RESERVED