前任者
「なるほど・・・。それで最初から問題外なんですね・・・」
「もちろんさっきも言ったけど、1人1人確認して回ったわけじゃないから、
もしかしたら本物もいるかもしれないわ。でも99パーセント
詐欺師とわかってる集団なんて・・・」
「選考対象に入れるだけ時間の無駄ですよね・・・」幸太郎が後をつなげた。
どうしても聖人が必要なら探す価値はあるだろう。しかし、成仏大作戦は
聖人である必要は全くない。
要はネクロマンサーになって、ちまちまと『成仏』と唱えて回れば
いいだけなのだ。それで事足りる。
「では聖職者はどうなんですか? こんな話は大喜びで
飛んできそうですけど・・・」
「あー・・・。うん・・・実はね・・・。あんたは『二人目』なのよ・・・」
「私に前任者がいたのですか?!」
「そう・・・。私もあんたと同じことを考えていたのよ・・・。
聖職者ならこの成仏大作戦は大喜びでやってくれるんじゃないかってね・・・」
アステラは盛大な溜息をもう一回ついた。
「私はアマテラス先輩に『聖職者』を派遣してほしいって要望をだしたの。
これがあんたの前任者。きっとうまくいくと思ってのことだったけど・・・
うん、散々な結果だったわ・・・」
「そ、そんなにひどかったんですか?」
「まず結果を先に言うわね。彼はただの1人も成仏させずに終わったのよ」
「ひとりも? まったく? いったい何が起きたんですか?」
アステラは渋い顔で顛末を語った。
(C)雨男 2021/10/31 ALL RIGHTS RESERVED