私をもう一度奴隷に
モコは心の中で唸った。『力を貸してくれ』?
こちらが頼む立場なのに・・・。
モコは覚悟を決めた。
「幸太郎様。どうか、私を幸太郎様の奴隷にしてください」
「え? なんで? せっかく首輪は外れたのに?」
「はい。どうか、私の命、幸太郎様のお役に立ててください」
「いやいや、気持ちは嬉しいけど・・・。俺の奴隷になるってことは
ずっと俺の旅についてくるってことだよ? もう話したよね?
俺はアステラ様の御用で一生、旅から旅で終わる予定なんだよ。
定住することもできない。一生さすらう宿命なんだから」
「承知の上です」
「それに、俺の奴隷になるってことは、あれだよ?
俺があーんなことや、こーんなことをしようとしても、
モコは拒否できないんだよ?」
そう言って幸太郎は両手をワキワキさせて、ベロをだした。
「もちろん、誠心誠意。私の全てを使ってご奉仕いたします」
モコはわずかに首を引き、口を固く結んだあと、
キッとした目で幸太郎を直視した。
目の中に覚悟が宿っている。
「なんだって、そんなに・・・」
そこまで言って、幸太郎は口をつぐんだ。
やっとモコの考えがわかったからだ。
(C)雨男 2021/11/21 ALL RIGHTS RESERVED