村を放棄
村のあちこちに火の手があがった。悲鳴が交差する。
村の長老は決断を下した。
「みんな逃げろ! 逃げるんじゃ! 村を放棄する! 村は終わりじゃ!」
村人は苦渋の決断を呑んだ。このままでは被害は増える一方だったからだ。
モコの父親と人狩りの手練れはまだ戦っていた。
しかし、モコの父親はすでに4回目の『ウルフクライ』を使用していた。
頭が割れるように痛い。吐き気もする。視界がおかしい。苦痛に顔がゆがむ。
その代わり、人狩りの手練れも指輪を全て失っていた。
モコが叫んだ。
「お父さん逃げて! お母さんと、弟・・・レオをお願い! 早く!」
モコの父親も、また、苦渋の決断をせざるを得なかった。
ここで倒れるまで戦えば、この手練れは倒せるかもしれないが、
家族が他の人狩りの餌食になってしまう。
それでは元も子もない。
「く・・・。モコ! 必ず助けにいくからな!!」
村人たちは散り散りに逃げた。・・・村は死んだ。
人狩りたちは、それ以上追ってこなかった。
追っても『割に合わない』と思っていたからだ。
何より依頼されていた子供たちは確保できていたし、
おまけに上玉の娘が手に入ったからだ。あとは村の金品をあさるだけでいい。
(C)雨男 2021/11/21 ALL RIGHTS RESERVED