研究には金がいる
ちょうど2週間目。子供たちはまた、
こっそり飴をもらいに学者のところへ行っていた。
しかし、その日はちょっとだけ様子が違った。近くの木に梯子がかけてあり、
枝の上で誰かがスケッチをしていた。小狼族は耳がいい。
樹上に二人いるのは、子供たちにはすぐにわかった。
しかし、特になんとも思わなかった。
学者はいつも何かを記録していたからである。
学者が近くの大きな石の上に、飴の袋を置いた。学者が離れると
子供たちは大喜びで飴の袋に近寄った。
その時、樹上から投網が降ってきた。網が子供たちを覆う。
子供たちは逃げようとしたが、手遅れだった。いつもの学者たちではなく
人相の悪い人狩りたちが、子供たちを取り囲んでいた。
樹上にいたのも、付近にいたのも全て人狩りだった。
学者は飴の袋を置いた一人だけ。
「悪いねえ、学問にはいろいろお金が必要なんだよ。
君たちもいい勉強になったろう?
今後の人生に生かしてくれたまえ。まあ、もうすぐ終わる人生だがね。
薄汚い獣人が我々の役にたつんだ。いい人生だったと
神に感謝するのを忘れないようにな。あっはっは」
(C)雨男 2021/11/19 ALL RIGHTS RESERVED