干し肉 1
幸太郎はモコに『隷属の首輪』について聞こうとした。
しかし、この時ひとつ、幸太郎は別の困ったことに直面していた。
実は先ほどから幸太郎は『マジックボックス』から干し肉を取り出し
かじりついていた。・・・のであるが・・・。
(これこれ、これよ! 荒野で干し肉! ワイルドだぜ!)
ところが。硬い。ちぎれない。文字通り歯が立たない。
歯が折れそうな気がした。マジで。
幸太郎はしばらく干し肉と格闘した後・・・あきらめた。
仕方なく、幸太郎は干し肉を捨てようと、振りかぶった。
「え? 捨てちゃうんですか?! もったいないです!」
モコはそう言うと、幸太郎の手から干し肉をひょいとつまんで取り上げた。
そしてモコは幸太郎の食べかけをそのまま食べる。
モコは硬ったい干し肉を『バツン』と嚙み切った。
「・・・え・・・?・・・」
いやいや、なんか絵面がおかしくね?
幸太郎は文字通り全く歯が立たなかった。
当然だが幸太郎だって男である。
モコは暗かったとはいえ、幸太郎が『少女』と勘違いしていた
小柄な女性だ。今、何が起きた?
(C)雨男 2021/11/19 ALL RIGHTS RESERVED