この世界の補給事情
「例えば、さっきでたコルト王の軍事行動です。
この世界の軍隊は基本的に補給は『略奪』で補います。
そうです、行った先々で村や町を襲って食料などを補給するのです」
「え? でもさっき国中から物資を運搬したって・・・」
「そうです。しかし、それがどれほどの負担か、
ご主人様はまだ理解しておられません。
食料は保存食以外は1週間と保ちません。
水にしても井戸か、川で補給するしかないため、
軍が駐留できるのは町か、池、川のそばしか無理です」
「そうか・・・俺の無限に使える『飲料水』ひとつだけでも
水源無しで軍がどこへでも行けることになるのか・・・」
「コルト王の軍への補給はバルド王国全体を揺るがしました。
『商業都市ユタ』へ付近の小さな村や町から全て食料が送られました。
そして、すっからかんになった町や村へ、
さらに東の町や村から根こそぎ食料が送られて、
さらにその東の町や村から・・・。これが領土全体で行われたのです。
搬送も馬車や人力の荷車で数日かけて運ぶしかありません。
当然、運搬する人々の食料も膨大な量が必要です。
軍は1万と言われていますが、補給のために動いた人員は
その10倍はいたと言われています」
「す、すごいお金がかかったんじゃない?」
補給の失敗は、作戦の失敗・・・。
この滅茶苦茶な補給を9年も続けたのか・・・。
幸太郎はコルトの馬鹿さ加減を見誤っていた。
(C)雨男 2021/11/16 ALL RIGHTS RESERVED