空白地帯のわけ
「もっとも、コルト王は未成年のころから酒浸りだったせいで
手足や顔がむくんで、いつ死んでも不思議ではなかったそうです」
「なるほどね。暗殺で死ぬのが先か、病気で死ぬのが先か、
だったわけか・・・。コルト王子には私生児が6人いたと
カルタスに聞いたけど、誰が即位したのかな?」
「え? 私生児ですか? 聞いたことがありません。コルト王は
死ぬ1年前に侯爵家の娘と結婚していて、
その赤子が幼くして王位に就いたそうです」
「そうか・・・私生児6人は・・・新たな出発のために皆殺しか。
公爵や侯爵は王族の血縁のはずだから、そちらを当てたんだな。
本当はコルト王子は結婚してなくて、
その王様はコルト王子の子供ではないだろう・・・」
「コルト王の童話は子供向けに、財宝欲しさに戦争を繰り返して
結局貧乏になり、最後に残った宝は自分の子供だった、
というストーリーになっています」
「無難なところだな。ははは」
幸太郎は、もう一つ別のことに納得していた。
アステラとムラサキは、魔物のいない地域に幸太郎を降ろすと
言っていた。それはコルトが9年も大軍を
うろちょろさせたせいで、この地域一帯が、村も、魔物もいなくなって
しまったせいだったのだ。皮肉なものだと幸太郎は思った。
(C)雨男 2021/11/16 ALL RIGHTS RESERVED