勘違いでは?
「ほ、本当に俺がモコの所有者になってるの? 勘違いなんじゃない?」
「いいえ、この首輪が誰が自分の主人であるかを教えてくれます。
ご主人様、『手綱』<リード>と唱えてみて下さい」
幸太郎が唱えると、モコの首輪から青い光がにょろにょろと伸びて
幸太郎の左腕に巻き付き、そのまま心臓のあたりで止まった。
「ご覧の通りです。『隷属の首輪』は幸太郎様が
ご主人様であると指し示しています。
どうか、末永く可愛がって下さいませ」
「その首輪は外れないの?」
「無理です。これは奴隷商人だけが扱える魔法がかかっています。
無理に外そうとすれば、首輪が締まって、私は死にます」
「ならば、奴隷商人に頼めばいいわけだな」
「高額な代金を請求されると聞きます。それに・・・
私の村は人狩りに襲われて、みんな村を放棄しました。
もう帰る場所はありません。
貴族のオモチャとして一生を終えるくらいならば、
ご主人様の奴隷として心も体も捧げたいです。
私はこの首輪を外したくありません。ご主人様にお仕えしたいです」
「そうか・・・村が・・・。あ! そうだそれより今は・・・」
幸太郎は時計塔を見た。戦っている時に出した時計塔は
そのまま残っていた。時間は8時9分。やっぱり1時間くらい
死んでたのか。もう他に盗賊たちはいないと思うが、
念のためここを離れたほうがいいだろう。幸太郎は立ち上がった。
「話はいったん後にしようか。まずはここを離れよう」
(C)雨男 2021/11/12 ALL RIGHTS RESERVED