もう聞き取れない
ガイコツの騎士の1人が少女の檻へ向かった。
檻には大きな錠前がかかっている。その鍵穴へ、指をスッと差し込んだ。
そのまま手をひねると『ガチャリ』という音とともに錠前が地に落ちた。
檻から少女が飛び出してきた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、私のせいで、こんな、ごめんなさい・・・」
幸太郎の耳はもうほとんど聞こえない、何か言おうとしたが、声ももう出ない。
ゴーストたちは再びゆっくりと、幸太郎の体を地面に横たえた。
幸太郎の周囲には全てのゴーストが膝をついて頭を垂れていた。
少女は幸太郎にしがみついて泣いた。
カルタスたちは再びかしずくと、幸太郎へ話しかけた。少し焦りが見える。
「幸太郎様。まだ終わってはおりませぬ。『冥界門』を閉じるのです。
この門が開いたままですと、冥界の亡者がこの門からあふれ出してしまいます。
お急ぎ下さい。幸太郎様以外には閉じることができませぬ」
幸太郎は素直にカルタスの言葉に従った。
もう視力が無くなりかけていたからだ。
おそらく幸太郎の意識はあと10秒もたない。
(閉じろ・・・『冥界門』・・・閉じろ・・・)
血のように真っ赤な『冥界門』はするすると閉じた。緑色に変わる。
(うまく・・・閉じた・・・らしい・・・)
幸太郎は死んだ。門が閉じ始めてからカルタスが何か
少女に話しているようだったが、もう聞き取れない。
幸太郎の意識は闇へ沈んだ。
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