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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 5
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イベントの準備をしよう 10


 ジュディスの『勘』は説明がつかない部分がある。



相手の持ち込んだ話が『儲かりそう』かどうかは、



まず相手の表情、視線、体の動き、



つまりボディランゲージから読み取っている。





女性は相手のボディランゲージを読み取るのが



男に比べて圧倒的に優れている。



男性の中で『天才的に鋭い』人と、女性の中で



『果てしなく鈍い』人を比べたとしよう。



結果は、それでもなお女性の圧勝だ。



男性ではまるっきり歯がたたない。



仮に点をつけるなら倍以上の差が出るだろう。





例えば、ある女性が幸太郎を気に入り、さりげなく



幸太郎に『気がある』ことを



ボディランゲージで伝えたとしよう。



モコたち『嫁ーズ』は全員、



そのことに遅かれ早かれ気が付く。



ところが、当の幸太郎は『全ッ然気が付かない』のだ。



男の脳は女性から見れば『壊滅的にニブイ』役立たず。



いったいなんのために搭載されているのか



理解に苦しむレベルだ。



男に『気付かせる』のは難しい。



はっきり言うなら幸太郎の前で下着姿になり、



『あなたが好きです!』と言うくらいしないと、



幸太郎は永遠に気づかないままだろう。



女の『・・・気づいてよ! 普通気が付くでしょ!?』



男の『え?・・・何を?』は、



古今東西、男女の『あるある話』トップテンに入る。





余計な話だが、これは女性が100%悪い。



『男の脳は女性から見ればポンコツもいいところ』



『生涯努力しても、なんとかなるような話ではない』



女性はそれを理解しておかないと、



『いつか太陽が西から上るような期待』を



し続けることになる。



本当なら義務教育で教えるべきだろう。



脳の構造そのものに違いがあるのだから。





全ての女性は男性から見ると



『コミュニケーションの天才』ということだ。



これは人類の歴史で女性が『子育てに特化』した



進化を獲得してきたという意味だろう。





これは脳の構造自体が違うのであり、



性別として生まれ持ったもの。



どんなに努力したところで、その差は絶対に埋まらない。



いくら『私、心は女なの!』と言い張ったところで



物理的に違うものは変更できないのだ。



男の脳は死ぬまで男のまま。








ジュディスはまず、話を持ち込んだ相手が



『本当に儲かると思っているか』を見分ける。



『相手が本当は儲かると思っていない』場合、話は断る。



簡単に言えば、詐欺の話などには絶対にひっかからない。



そして自分で勉強した知識から、



『これは無理』と思った話も断るようにしている。





ここまでは説明がつく。





説明がつかないのはこの後だ。



話を持ち込んだ本人が今一つ自信がなかったり、



ジュディス自身の知識や経験から



『だめっぽい』と思っていても、



『カネの匂いがする』とジュディスは金を貸すのだ。





話を持ってきた本人が『よくて五分五分』と思っていて、



実際に実行しても



『とても利益が出そうにないデータ』ばかり



という内容であったとしても、ジュディスの勘は外れない。





ただ、別の意味で100発100中というわけではない。



ジュディスが経験上『これは手を出さない方がいい』と、



カネの匂いがしても断ることはあるからだ。



そして、その話が『実はがっぽり儲かる結果』だったとしても、



ジュディスは全く気にしない。





ジュディスの目的は大金持ちになることではない。



2人の息子を立派に育てることだからだ。





だから、ジュディスは



『この勘は死んだ夫が力を貸してくれている』と信じていた。





金貸しなどやってるくせに、妙にロマンチックな所がある。



お金を返しに来た人に、花を一輪渡したり、



自分で焼いたクッキーを渡したりしていた。



それがこの女性の憎めないところで、



他人から好かれる要因となっているのだ。








ギブルスから計画を聞いたジュディスは絶句した。



そして、自分の勘が、またも正しかったことに感謝した。





「・・・驚いたよ・・・ギブルスさん。


こいつは確かに大金を用意しておかなくっちゃね。


それにしても『世界樹の落ち葉』を競売にかけるなんて、


歴史上初めてのことじゃないのかい?


バザーや大会も、良く思いついたと感心するよ」





「ひっひっひ、まあ、わし1人で考えたことではないがのう」





表向き、幸太郎の名前は大っぴらに出せないので、



自分とジャンジャック、グレゴリオで考えたと言っておく。





「ふふ、謙遜しなくていいよ。


面白くなってきたじゃないのさ。ウチの息子たちも


大会は出たがるだろう。年齢制限とかあるのかい?」





「年齢制限か・・・。そういえば、無いのう・・・。


大会は『あの』サンドウィッチ伯爵が来るから、


とりあえず16歳以上か、以下かで分けないと、


勝負にならんじゃろう」





「あの伯爵じゃあ、子供相手でも一切手加減しないだろうねぇ。


なにせ普段から『世界一』を自称してるくらいだからさ。


誰が相手でも滅多斬りにするだろうよ」





「うむ。あとで早速大会のルールに変更を加えておこう。


『大人の部』と『16歳未満の部』じゃな。


ただ、賞品が無いから、何か考えておかねば・・・。


そうじゃ、少し惜しいが、


わしのキラーマンティスのはく製を優勝商品にしよう! 


かっこいいから喜ぶじゃろう」





「うえっ、そんな気味の悪いもん捨てちゃいなよ!


子供たちはそんなモンで喜ばないって」





「じゃあ、その中にいた


8メートルのハリガネムシの方がいいか?」





「ふざけてんじゃないよ、ギブルスさん。


まったく変人ぶりは相変わらずだね・・・。


なんだって、高い金出してまで、そんなヘンテコなもの


買い漁るんだか・・・。


仕方ない。ここは私が一肌脱ごうじゃないか。


マフマフ・ラビットの毛糸で手袋と帽子を編んだげるよ。


それを商品にするといいさ。お金はいいよ、


しこたま儲かるのは確定したからね」





「おお、ありがたいのう。では小遣い程度に賞金を


用意しておけば、親御さんも喜んで


子供の参加を認めるはずじゃ」





「よし、決まり。競売の後の書類などは、


今のうちから用意して整えておくよ。


くれぐれも内緒で頼むよ? ギブルスさん?」





「おやおや、元々はこっちの考えたイベントなのに。


ひっひっひ。面白い、面白い」





商人2人の密談は無事締結となった。



これは幸太郎の計画に入っていなかった部分だ。



最終的に『いくらで売れるか』について



幸太郎の読みが甘いところがあり、



それを現金化するには、



どうしても金融業のツテがないと足元を見られるし、



ボったくられる危険があった。





予想では『世界樹の落ち葉』を落札するのは



リヴィングストン侯爵だ。



侯爵の高齢の母親が半年前から思うように立てなくなり、



寝たきりに近い状態だという。



『世界樹の落ち葉』で怪我は治らないし、



寿命も延びたりはしないが、病気なら何でも治る。



どんな病気だろうと一発だ。



絶対に欲しがるだろう。





ただ、リヴィングストン侯爵が落札した場合、



侯爵は『約束手形』を書く。



侯爵が書いた手形と現金を交換するという証文だ。



当たり前だが大金を持ち歩いたりはしない。





なにせ『金』は重いのだ・・・。





ギブルスは『世界樹の落ち葉』は



トータルで金貨5000枚は下らないだろうと考えていた。



ちなみに幸太郎は金貨1000枚くらいと考えている。



甘い。





全部金貨で用意すると、とてつもない重量になるのだ。



『比重』というものがある。



それは1立方センチの水に対して、



どのくらい重いのかを表している。



要は比重が1より小さければ水に浮くし、



1以上あれば水に沈むというわけだ。





金の比重は、約19・3・・・。





鉛が11・3なので、鉛より2倍近く比重が大きい。



バカみたいに重い鉛でさえ金に比べれば軽いのだ。



なじみのある鉄でも7・9くらい。





つまり、仮にリュックサックいっぱいに金貨を詰め込むと、



同じ大きさの鉄板の2倍くらいの重量になる。



リュックサックいっぱいの鉛を想像してみるといい。



果たして人間はそれで歩けるか?





もちろん、そんな重量物を持ち歩く人などいるわけない。



だから、商売人や貴族は『手形』を発行する。



具体的には『この証明書と金貨100枚を交換する』



といった約束が書いてある。





幸太郎は規格外の『マジックボックス』を持っているので、



例え金貨5000枚だろうと問題ではない。



だが、金貨5000枚が余裕で入る



『マジックボックス』を持っていることは



色んな意味で大っぴらにしない方がいい。





そして、問題は幸太郎のほうではないのだ。



最終的には『孤児院の所持金』になるから、



ちゃんとした正規の換金方法で、



銀行にお金を預けておく必要がある。



孤児院に大金があるとわかれば、



コソ泥がうじゃうじゃと寄ってくるだろう。





幸太郎は、この部分が計算に入っていなかった。





ただ、ギブルスにしてみれば大した問題ではないのだ。



幸太郎に言う必要もない程度。



良心的な手形交換所・・・つまり



ジュディスを巻き込めば、それで解決するから。





手形を換金するには銀行に頼むのが一番早い。



しかし相手次第では、足元を見られて、手数料などで、



ごっそりと利益を削り取られる危険があるのだ。



ギブルスはそれを見越して、



先に危険を潰しにかかったというわけである。



ジュディスの銀行で手数料を払い、手形を現金と交換。



そして、そのままジュディスの銀行に預金しておけばいい。





やはりギブルスの方が幸太郎よりも一枚上手。








こうして幸太郎、ギブルスの根回しで障害は全て排除できた。



あとは準備を進めてイベントを実行するだけである。





そして2週間後。いよいよイベントが始まった。






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