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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 5
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イベントの準備をしよう 6


「残念ながら普通の人間では対処できないでしょう。


仮にどこかの貴族の騎士団が出動しても、


全滅すると思います」





「それほどか・・・。対策はあるのか?」





「倒せるとすれば、師匠・・・バーバ・ヤーガさんか、


『ナイトメアハンター』くらいしかいないと思われます。


特に今回のカース・ファントムは強力で、


ナイトメアハンターが高次元の神霊を呼び、


ギリギリなんとか地獄へ送り返したほどでした。


世界の危機だったと言っても、過言ではないかもしれません」





「恐ろしい敵だな・・・。対策も無い、か。


人類は無力よな・・・」





「しかし、絶望する必要はないでしょう。


辺境伯様が以前おっしゃった通り、悪魔に対抗する者も


またいるのです。


そして、全く対策が無いわけではありません。


人々への教育です。


悪魔も直接地上へ手出しできないので、


信者や、悪魔に魂を売った者を使います。ですから、


安易に『うまい話』に乗らないよう人々を啓発するのです」





「なるほど。悪魔は直接介入できないことを利用するのか。


教育か、なるほど。手立ては考えておこう。


いいことを聞いたな」





この後、少しアルカ大森林についての話題が出たが、



『特に今までと変化なし』と判断され、



グリーン辺境伯と幸太郎の会談は終わった。








辺境伯家の屋敷を辞した幸太郎とモコ、エンリイは



歩いて孤児院へ向かった。



エーリッタとユーライカ、クラリッサとアーデルハイドは



どこまで話を進めているだろう。





「あ、幸太郎さーん! こっちこっちー!」





耳の良いエーリッタとユーライカが幸太郎に手を振る。





「やあ、お待たせ。グリーン辺境伯にイベント開催の


許可はもらってきたよ。こっちはどこまで説明したかい?」





「ああ、もう計画自体は全部説明して、賛同してもらった。


まあ、どっちみち、建物は来年までもたないかも


しれないから、やるしかねえんだけど」





鎧を外したクラリッサが孤児院の建物の中から顔を出した。



どうやら、もう始めているらしい。





幸太郎が彼女たちに頼んだのは『建て直し計画の説明』と



バザーのための準備だ。





今、孤児院の中でクラリッサが教えていたのは『裁縫』。



カーレの街中を回り、壊れた服などをタダで譲ってもらい、



それを修理してバザーで売ろうというのだ。



しかも、ただ直すのではなく、つぎはぎの部分を



ネコやイヌ、花、果物、ハートマークなどで



飾ることで、可愛くする。男向けには剣や盾、



ドラゴンの顔などをデフォルメしたデザインの布を当てる。



オタクの幸太郎が発案したものだ。



デザインも幸太郎。オタク能力バンザイである。



要は少し『付加価値』をつけようというだけのことだ。



ついでに、この文化がこの世界に広がればいいな、とも



思っている。文化侵略? なにそれ?





現在、練習を兼ねて、クラリッサとアーデルハイドが



孤児院の子供たちの服を修理して『見本』を見せていた。



なぜか、知らないがクラリッサとアーデルハイドは



子供たちに大人気である。サイコな幸太郎と違って



彼女たちの雰囲気に安心するのかもしれない。





「あれ? 幸太郎さんたちじゃないっスか」





外から声がした。



振り返ると帰ってきたルークたちだった。





「やあ、久しぶり。ん? あれ? 1人足りないけど・・・」





幸太郎は嫌な予感がした。



しかし、そうではなかった。





「いや、ヨサークは孤児院の中にいますよ。


あいつ、先日ゴブリンと戦った時に、足に怪我しましてね。


まあ、それで私たちも今は薬草採集とかだけに


してるんですよ」





ルークが説明してくれた。





「あ、幸太郎さん、よかったらヨサークの怪我、


治してやってくれないっスか? なにせ、医者に


かかるカネはないし、教会は隣なのに、どうにもケチで」





(孤児院はオーガス教の教会が運営してるのに、


世知辛いこというなあ・・・)





幸太郎は少しがっかりしたが、まあ欲深いから



聖職者なんてやってるのだろう。仕方ない。





幸太郎が孤児院の中へ入ると、ヨサークが寝ていた。



聞けば、膝の上あたりに大怪我をしたという。



見せてもらうと、日本なら30針か、40針は



縫うような大怪我だ。しかし、すりつぶした薬草と



包帯だけしか手当されてない。





(金がない、ということは、苦しいもんだな。


これが、この世界の現実か。いずこも同じ、


『それにつけてもカネの欲しさよ』ってことらしい・・・)





しかし、幸太郎が来た以上、もう心配はいらない。



『陽光の癒し』で一瞬で完治する。





ヨサークたちは大喜びでお礼を言うが、



別に、このために来たのではない。



孤児院再建計画を進めるためだ。



ついでにルークたちにも協力してもらおう。



幸太郎は孤児院にいる人全員に詳しく説明をした。





「よーし、まずは廃品回収からだ!」





計画を説明した後は、さっそく行動開始。








幸太郎が引率して、荷車で町を回る。



荷車は幸太郎の『マジックボックス』にもあるが、



孤児院と教会のものを貸してもらった。





一応、教会にも『孤児院の建て直し』計画を話した。



教会の司祭はおとなしく話を聞いてくれるが、



どうにも顔色が悪い。



幸太郎の仕掛けた邪悪な作戦のせいで、



すっかり悪者扱いされて憔悴しきっていたのだ。



建て直しについては『この善行を大神オーガスもご覧に



なっていることでしょう。よろしくお願いいたします。



あなたがたに大神オーガスのご加護があらんことを』と



あっさり許可をだしてくれた。



今は教会の評判が回復する行いなら



なんでも許可してくれるだろう。





ただ、幸太郎は思う。





(オーガスさんの加護なんかいらねーっての。


あとで、どんな請求書がくるか、わかりゃしない・・・)








荷車をルークたちが押して、幸太郎たちが同行する。



狙うのは一般家庭よりも商店だ。






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