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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 5
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イベントの準備をしよう 5


 幸太郎は自分が潰した『辺境伯家乗っ取り計画』の



結末を知らない。知ることもない。



だが、それでいいのだ。幸太郎はあくまでも



『なんの変哲もない、どこにでもいる、いち、冒険者』なのだから。



世の中には知ってはならないこともある。





ここで幸太郎は自分の目的、『イベント開催の許可』を



グリーン辺境伯に求めることにした。



辺境伯に直接会える機会など、



ただの冒険者には滅多にない・・・いや、普通は



望んだところで手に入るものではないのだから。








「・・・ほう・・・。バザーに大会、そして競売か。


面白いな。いいだろう。許可しよう。


しかし、孤児院の建物が、そんなにボロボロになっていたとは、


知らなかったな。無論、我々の管轄ではないが、


君が建て直しに尽力してくれるなら、こちらとしても


ありがたいことだ。市民の平穏な暮らしにも


寄与することだろう」





「ありがとうございます。一応、警備に負担をかけることに


なりますから、売り上げの2割を税金としてお納め致します。


それと、これは・・・お土産でございます」





幸太郎は『マジックボックス』から、例の壺を取出し、



フランクへ渡した。



フランクが中身を見て、少し首をかしげると



幸太郎に説明を求める。中身の正体を聞いたフランクは



目を見開いて驚きの声をあげた。





「・・・な、なんだと!? これが! 本物か!?


こんなに大量に・・・いいのかね?


伝説級のシロモノが・・・いや、本当に実在するとは」





「おいおい、フランク、お前ばかり驚いてないで、


私にも見せてくれ」





フランクは興奮のあまり、1人で壺を抱えて驚いていた。





「も、申し訳ありません、旦那様。どうぞ」





「これが・・・伝説の『世界樹の落ち葉』か・・・。


万病に効くと言い伝えがあるが・・・。


実物を見たことのある者など、今の世に1人もおるまい。


『世界樹の葉』と共に、文献には散見されるが、


まさか実物をこの目で見る機会があろうとはな。


幸太郎君、つくづく恐ろしい男だな、君は」





「いえ、これはドライアード様とB級冒険者の


ジャンジャックとグレゴリオのおかげですよ。


私はついていっただけですから」





幸太郎はしれっと嘘をつく。





「謙遜しなくていい。並の人間が頼んでも落ち葉一枚とて


もらえはしないだろうからな。


・・・本当にいいのかね? こんな大量に


もらってしまっても・・・」





いいもなにも、幸太郎の『マジックボックス』には



キャンプファイヤーできるくらい、



うじゃうじゃと大量に入っている。



そして何より『世界樹の葉』と同じ効果のある



『陽光の癒し』が無限に使えるのだ。



惜しいはずもない。





「ええ、構いません。どうぞお納めください。


それに、実は冒険者ギルドのキャサリン支部長にも


協力の見返りに数枚渡してあります。


こちらの打算でもあるのですよ。あははは」





「ふふ、君は話の分かる男でもあるのだな。


いいとも、喜んで協力しよう。フランク、幸太郎君から


何か要望があれば、可能な限り協力してあげなさい」





「かしこまりました。旦那様」





これでイベントの開催ができる。孤児院の建て直しは



決定したも同然。子供たちもきっと喜ぶだろう。





「あ、辺境伯様、もう1つ、いや2つ、お願いしたいことが


あるのですが・・・」





「ん? なにかね? 言ってみなさい」





「1つはリヴィングストン侯爵にもお声掛けいただきたいのです。


『世界樹の落ち葉』を一番欲しがっていると


耳にいたしました。


ギブルスさんが根回ししている最中ですが、


グリーン辺境伯様からもお声掛けいただければ、


きっと参加して下さるでしょう」





「そうか、あの件か。わかった。手紙を書こう。


はっはっは、まったくギブルスはどこにでも顔を出すな。


私の父と、夜更けまで酒を飲んで歌っていた頃を思い出すよ。


それで、もう1つはなんだね?」





「もう1つは、ユタのファルネーゼ辺境伯様にも


お声掛けいただきたいのです。2回目の大会は


ユタで行いたいと思っております。


2つの都市の往来が多くなれば、必然的に商売も


盛んになるでしょう。もちろん税収も増えるはずです。


それに豊かになれば、争いが再開する可能性も


減ると思います。政治は様々な要因が絡みますが、


互いに利がある存在だと認識できれば、


歯止めの1つになりうるかと」





「ふむ・・・。しかし、来るだろうか?」





「それはご心配には及ばないでしょう。


ファルネーゼ辺境伯は争い事が苦手なお方です。


平和への道ならば、迷わず一歩を踏み出すと思います」





これは、すでに本人が『行く』と言ってるのであり、



それに対して『それっぽい』理屈を後付けしてるだけである。





グリーン辺境伯は顔には出さないが、またも腹の中で



幸太郎に感心していた。





(この幸太郎と言う男は・・・いったいどこの出身なのだ?


政治に関しても、明らかに一般市民とは見えてる範囲が


違う、違いすぎる。


いや、貴族ですら、ここまで優れた


考えや判断力を持っている者は、なかなかいない・・・。


惜しい、つくづく惜しい。


『荒野の聖者』でなければ、


エメラルドの婿に欲しいところだが・・・残念だ)





別に幸太郎が優れているわけではない。



日本の義務教育の賜物である。



日本人なら、誰だってこのくらいのことは言える。





グリーン辺境伯の感心と落胆は別にして、



ともかくイベントのお膳立ては整った。



これで計画が『実行』できる段階まで用意は完了。



そろそろ辺境伯家を辞する頃合いだろうと



幸太郎は思った。





「そうか、では、貴賓席を設けて、私も観戦させてもらおうか。


サンドウィッチ伯爵は絶対に来るだろう。


面白いものが見れそうだ。楽しみにしているよ」





話がまとまって、お開きという雰囲気が漂う。



だが、シャオレイとヴィンフリートが『待った』をかけた。





「ね、幸太郎、それでバーバ・ヤーガはどんな魔法を使って


その『カース・ファントム』ってのを倒したの?」





「バーバ・ヤーガとバーバ・ババは、今では失われた魔法も


使えると聞いておる。どんな戦いだったのかね?」





2人は魔法オタク。





幸太郎はあらかじめ作っておいた偽のストーリーを



語って聞かせた。ただし、出演予定のなかった



『ナイトメアハンター』を組み込む必要があったので、



攻撃をナイトメアハンター、防御をバーバ・ヤーガが



担当することにした。でっち上げだ。





「『理力結界』ぃぃ!?!? マジックアカデミーですら


文献の中にしか登場しない魔法よっ!?」





「ううむ!! しかもそれを無詠唱で使用できるのか!!


さすがは『黄昏の魔女』よ! 一度マジックアカデミーで


生徒や講師たちの前で講演してもらいたいもんだな!


きっと大講堂は満席になるだろう!」





「私は実際に見てみたいわ! 『理力結界』・・・。


文献では『結界』の上級魔法で、武器や魔法だけでなく、


『霊力』というものも防ぐという・・・! 


今では誰も理解できない力だけど、


実際に『理力結界』が存在している以上、


その『霊力』という力、概念も実在してるということね!」





「もしや、バーバ・ヤーガは伝説の『磁力結界』も


使えるのではないのか? 『結界』の中でも防御力は


最上級で巨石の下敷きになってもこゆるぎもせず、


100人で放った魔法すら逸れていくと言い伝えがある。


どうだね? 幸太郎君、何か聞いておらんか!?」





2人は大興奮でグイグイ幸太郎に迫る。近い近い。





「は、はい、確か一度『磁力結界』というものを


使えると聞きました」





本当は母親のバーバ・ババが使えるとリーブラから



聞いただけだ。



ただ、おそらくバーバ・ヤーガも使えるだろう。





「おお! 本当かね!」





「素晴らしいわ!」





2人は大興奮だ。鼻息が荒くなっている。



ここでグリーン辺境伯から他の質問が飛んできた。



『カース・ファントム』について、少し知りたいようだ。





「そういえば、その『カース・ファントム』はどんな敵なのだ?


対処法は何かあるのか?」






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