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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 5
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イベントの準備をしよう 2


馬車の中で、シャオレイが早速質問してくる。





「ね、ね、『地獄の亡者』ってどんなやつ? 強かった?」





あの容姿端麗、才色兼備なシャオレイが、



少し興奮気味に早口でしゃべる。興味深々なのだろう。





「えーっと、あの、その前に、どんな噂が広まっているのでしょう?」





幸太郎は一応確認してから話すことにした。



なにせアルカ大森林では、かなり強烈な『尾ひれ』が



くっついていたのだ。



噂の発端はモーラルカ小国群からだろうか?



それともジーベックの町か、はたまたヨッカイドウあたりか?



人から人へ噂話が伝わる間に、どんなトランスフォームを



しているか心配だったのだ。





「ヨッカイドウから伝わっているのは、アルカ大森林に


地獄の亡者が現れて、森とドライアードたちが大ピンチ!


そこへ『荒野の聖者』と


『ナイトメアハンター』がマントをひるがえし


颯爽と現れ、地獄の亡者の前に立ちはだかった!


荒野の聖者が恐ろしい死病に立ち向かい、


ナイトメアハンターが太陽神から授かった力で


地獄の亡者を再び地獄へ封印した!!・・・って感じかしら」





(なんやねん、それ・・・)





幸太郎は少し頭痛がした。より一層話が盛られている。



しかも、アルカ大森林では入ってなかった



『ナイトメアハンター』まで、



ひょっこり登場しているのだ。





(いや、どっちも俺じゃんか・・・俺が同時に2人


出現してるって話になってるやん)





しかし、下手に噂話を否定するわけにもいかない。



否定するには真相を話さなければならないが、



真相は到底話すわけにはいかないのだ。



そして、そもそもムキになって



噂を否定しなければならない理由がない。



意地になれば『なんでそんなにムキになる?』と



疑念を抱かせることになるだろう。





幸太郎は一応、噂話対策として、



『バーバ・ヤーガが倒した』という



ストーリーを考えていた。もちろん、バーバ・ヤーガに



許可は取ってある。



バーバ・ヤーガは笑って『好きにせい』と



言っただけ。サンキュー師匠。



しかし、想像以上に膨れ上がった噂話を耳にして、



少し修正を加えなくてはならない。





「えーと、実はですね。地獄の亡者と戦ったのは、


ナイトメアハンターと、私の師匠、バーバ・ヤーガなのです。


私は戦いが終わった後で、


『恐ろしい病気が撒き散らされた。


治療と病気の根絶に力を貸してくれ』と


頼まれただけでして。


地獄の亡者につきましては、師匠から聞いた話だけですよ」





「バーバ・ヤーガが!? 『黄昏の魔女』と


『ナイトメアハンター』が共闘!?


なにそれ! かっこいいじゃない! なになに?


どんな魔法でやっつけたの???」





シャオレイが身を乗り出して話に食いついてくる。



やはり魔導士として、魔法で強敵を倒した話は



気分がいいのだろう。





しかし、話はいったんここで終了。



馬車がグリーン辺境伯の屋敷へ到着してしまった。



執事のフランクが笑顔で出迎えてくれる。



冒険者ギルドとグリーン辺境伯の屋敷は遠くないのだ。





「久しぶりだね、幸太郎君。アルカ大森林では大活躍だったとか。


さあ、旦那様がお待ちだ。ついてきたまえ」





幸太郎たちは小さな応接室に通された。



以前、エメラルド嬢を救った時にキャサリン支部長と



一緒に入った部屋とは別の部屋だ。



屋敷の主と客の位置が、より近くなる。



簡単にいえば、それだけ幸太郎たちの信用が



高くなっているということだ。





少し待っていると、フランクがドアを開け、



グリーン辺境伯が笑顔で入室してきた。





幸太郎たちは立ち上がり、挨拶をするが、



グリーン辺境伯は挨拶もそこそこに本題へ入る。



グリーン辺境伯は真剣な面持ちで幸太郎に質問した。





「幸太郎君。君が治療したという『死病』とは、


いったいどんな病気だったのかね? その『死病』は


全て治せたのか? ジャンバ王国に拡散する可能性は?」





さすがは領主だ。恐ろしい『死病』のことが気になって



仕方ないらしい。



思えば、グリーン辺境伯は長男のセドリックを



流行り病で亡くしている。





「はい、拡散の可能性はありません。えーと、その、


一応、念を押しておきますが、私は『荒野の聖者』では


ありません。人違いです」





「おお、そうそう。もちろんだとも。理解しているよ。


『人違い』だな。了解だ。


それで、どんな病気だったのだ?」





グリーン辺境伯も『タテマエ』は守ってくれるということで、



幸太郎は『黒死病』について説明をした。





「・・・ううむ。致死率がそんなに高い死病とは・・・。


全身が内出血で黒く見えるから『黒死病』、か・・・。


なんとも恐ろしい病気だ。


そんなものを撒き散らして


地獄の亡者は何をする気だったのだろうな。


人類を死滅させるつもりだったのだろうか?」





「そういうわけではないようです。目的はドライアード様たち


だったようです。師匠が・・・バーバ・ヤーガさんが


そう言っていました。


地獄の亡者は『カース・ファントム』と


いうそうですが、そのカース・ファントムの目的は


アルカ大森林を地獄に変えること、


そして、そこを起点として


世界を地獄に塗りつぶすことだったみたいです。


恐ろしい死病は人々にドライアード様へ


助けを求めさせるため。


病気に感染した人々はドライアード様を呼び寄せるための


エサだったと、バーバ・ヤーガさんは言ってました」





「なんということだ・・・。アルカ大森林を地獄に変え、


そこから世界全てを地獄に変える計画とは・・・。


そんなことをして、いったい何の利益があるというのか・・・」





「いいえ、利益ではありません。単に『面白いから』だと


バーバ・ヤーガさんは言っていました。


悪魔や地獄の亡者は地位や名誉、金銭的な利益、


美しい女性などにはまったく興味がありません。


その気になればいくらでも手に入るからです。


自分で作ることだってできるでしょう。


例えるなら、砂浜の砂をバケツに集めるようなものでしょうか。


いくらでも手に入るのに、わざわざ多大な金銭と労力を


つぎ込む気にはならないということです。


彼らは人間同士が争い、苦しみ、悲鳴をあげ、


涙するのを見るのが楽しいらしいです。


悪趣味ですよね・・・」





『リーブラさんは違うけど』と幸太郎は思った。





「・・・悪魔に対抗する策を講じねばならないか・・・」





「いいえ、悪魔そのものに対抗する手段は必要ありません。


バーバ・ヤーガさんが言うには、悪魔自身は


直接手出しはしてこないとのこと。


それをやると、神々と全面戦争になり、勝ち目が無いうえに、


巻き添えで人類が死滅すると、やることが無くなって


しまうから、だとか。


彼らがやることは、人々をそそのかし、


間接的に世界を混乱へ導くことだけです。


唆された人が欲望を暴走させ、社会に混乱を引き起こし、


人々が悲嘆にくれる様こそが、『悪魔の望み』だとか」





「・・・もしかすると・・・。ピシェール男爵を


そそのかしたという謎の行商人は、悪魔の化身だったのかも


しれんな・・・」





「おそれながら、私もその可能性は高いかと・・・」





ここで幸太郎は、逆にグリーン辺境伯に質問してみた。






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