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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとアルカ大森林 5
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番外編 第二次嫁ーズ会議 4


 『嫁ーズ』7人は、地球の感覚で言えば、間違いなく



狂っている。幸太郎を好きになるなんて、狂気の沙汰だ。





ただ・・・説得は無意味だし、無駄。



そして死ぬ可能性があるからやらない方がいい。





例えば、



『あなたたちは狂ってる! 幸太郎を好きになるなんて



絶対おかしい! 目を覚ませ! 今すぐ別れるんだ!』



と説得したとしよう。





もし、アーデルハイドに言えば、すごく嫌そうな顔をして、



無言でそっぽを向き、どこかへ行ってしまうだろう。





ファルに言えば、『お気遣いありがとうございます。



でも、私たちはこれで満足してますわ。どうぞお構いなく』と



笑って、どこかへ歩み去るだろう。





エーリッタとユーライカに言えば、



『ハァ? あんたになんかカンケーあんの?』



『意味わかんないんですけど。もしかして嫉妬ォ?』



と言って睨まれることになるだろう。





クラリッサに言えば、



『あー、はいはい。わかった、わかった。



うんうん、そうだね。よくわかったぜ。参考にするよ。



そんで? 他に用事はある?



そう、じゃあ、もう怪我しない内に帰りな』



と追い払われることになるだろう。








・・・逃げるなら今だ。








もし愚かにもエンリイに言ったなら、



『ふぅん、そう。ボクたちの邪魔をしようっていうんだね?



ボクたちから幸太郎サンを奪い取ろうってんなら



・・・敵だよね・・・。



じゃあ、ここで駆除しておかないと・・・』



そう言って棍を伸ばし、『ああ胸が痛むなあ』と大笑いしながら、



滅多打ちしてくるだろう。



例え相手が女性だったとしても



エンリイは絶対に手加減しないし、逃がしもしない。



謝っても手遅れだ。宣戦布告をしてしまった以上、



どちらかの死をもって決着とする以外にない。





もし、モコに言ったなら・・・



いや、モコは耳がいい、誰かに言ったのを



絶対に『聞き逃さない』はずだ。



観念して人生に別れを告げよう。



モコはまず、その忠告をしてきた人物を、男女問わず



無言で殴り続ける。髪の毛を掴み、無表情で、



一発ずつ、前歯が無くなるまで殴り続ける。



その後で微笑んでこう言うだろう。



『ちょっと「よく聞こえなかった」から、もう一回



言ってくれるかしら?』



そして、さっきの説得のセリフ以外を口走れば、モコは



その人物の右耳を引きちぎり、もう一度微笑んでこう言う。



『もう一回言えって言ったんだけど、聞こえないのかしらね』



ここで、その人物が謝ったり悲鳴でも上げようものなら、



今度は左耳を引きちぎり、今度はこう言う。



『耳にゴミが付いてるみたいだから、とってあげたわよ?



これでよく聞こえるようになったんじゃない?



じゃあ、もう、一回、言って、くれる?』



もう一度先ほどのセリフを繰り返すか、遺言を残すのかは



その人物の自由だ。



どのみち、もうモコは許しはしないのだから。



何を言った所で、モコに死ぬまで殴られることになる。



『私が! チビで! 子供みたいで! 胸だけ大きくて!



アンバランスだから! ご主人様には! 愛されないって!



言いたいのね! お前なんかじゃ! ご主人様には!



釣り合わないって! そう言いたいのね!



チビで悪かったわね!! 悪かったわね!!



ご心配どーもありがとう! 好きで小さいんじゃないわよ!



でもね! 私は! ご主人様に! 一生! ついていくって!



決めたのよ! 邪魔をするな! 邪魔者め! 害虫め!・・・』





バキッ、バキッ、バキッ、バキッ、バキッ、バキッ、バキッ、バキッ、


バキッ、バキッ、バキッ、バキッ、バキッ、バキッ、バキッ、


バキッ、バキッ、バキッ、バキッ、バキッ、バキッ、


バキッ、バキッ、バキッ、バキッ・・・。





男女は関係ない。この世界は悪い意味でも男女平等。



相手にケンカを売れば、女であろうと本気で殴られるのだ。



何かのドラマで女性が『男の股間を蹴り上げる』などという



セリフがあったそうだが、



それは『相手の男が反撃しない』前提で、



相手の男の優しさに盲目的に絶対依存している甘えた考えだ。



男の股間にあるものは『内臓の一部』だ。



当然、蹴られれば『即死』する可能性がある。



相手の腹へ包丁を突き刺しておいて、



相手の男が『一切反撃しない』と考えているなら、



さすがにもう一度、義務教育をやり直した方がいいだろう。





そしてこの世界なら命日になる可能性が高い。



元の地球でも大阪へ行ってヤクザ相手に試してみれば、



意味はよくわかるだろう。



アフリカやメキシコあたりなら



股間を蹴り上げる前に死ぬ可能性もあるが。



幸太郎と別れろなどというセリフは、



モコやエンリイには宣戦布告だ。



そして、自分で自分の死刑宣告文を



高らかに読み上げるようなもの。



モコは狂気の笑みを浮かべ、



相手の呼吸が確実に止まるまで



念入りに念入りに殴り続けるだろう。





あとは、偶然幸太郎に見つかって、仲裁に入ってくれるのを



期待するよりない・・・。



幸太郎なら、もとの地球の常識を引っ張りだし、



『やりすぎだよ』と止めてくれるだろうし、



『陽光の癒し』で全部治してくれる。



ただ、他の『嫁ーズ』が幸太郎の両腕に抱き着き、



『そういえば、さっきあっちで・・・』と別方向に誘導した場合、



幸太郎は現れない。最後のチャンスは消える。








幸太郎に『お前は狂ってる』というのは、別にいい。



幸太郎は苦笑しながら、こう言うだろう。



『そうだよな~。実は自分でも少しおかしいって



気はしてるんだよな~。でもさ、よく言うだろ?



自分で自分をおかしいって思う人は、おかしくないって。



だから俺は狂ってなんかないよなあ~。俺ってえらいね~。



ちゅみみ~ん』





しかし、幸太郎に『7人も妻を持つなんて狂ってる』と言うのは



絶対にやめた方がいい。





幸太郎は突然頭を抱えて悩みだす。



元の地球の常識で考えて



『男1人に女1人が自然の摂理のはずだよな・・・。



俺に7人も嫁がいれば、この世界で6人の男が



あぶれる計算になる。それに、俺に果たして彼女たちを



平等に愛することができるのだろうか・・・?



俺にはできない気がする。



やはり誰か1人を選ぶべきなんだろう。



でも、俺には・・・。もういっそ全てを捨てて・・・』



と、くよくよ悩みだす。





くよくよ悩む幸太郎は別に放っておけばいい。



特に害は無いから。





問題はそっちじゃない。





とにかく、モタモタしている場合じゃないのだ。



ここまでくれば『ミッションコンプリート』として満足し、



現場を全速力で緊急離脱する必要がある。



もはや1秒を争う事態だ! 走れ! 走るんだ!!





これに気づいた幸太郎の嫁予約の7人は、



さっきと打って変わって、



全員が明確な殺意を持ち襲いかかってくる。





『もう帰りなよ』と言うはずのクラリッサも眉を吊り上げる。



『お構いなく』と言うはずのファルも氷のような目で



『ブラックジェミニ』を発動させる。



無言で背を向けるはずのアーデルハイドすら、



『大好きなお姉ちゃんの結婚を邪魔する害虫』として、



ハエでも見るような目で金棒を振りおろすことになるだろう。





とにかく全てを捨てて、逃げ一択だ。



何を落としても、仲間が死んでも振り返ってはならない。



息が切れても心臓が止まるまで走り続けるのだ。





後ろからエンリイが来る。





そしてモコが来る。





いや、半径100メートル内の全てを撃墜する



エーリッタとユーライカの弓から逃げ切れるかどうか・・・。








まあ、あんまり他人の恋路に



口出ししない方がいいということだ。



誰かに恋するということは、例外なく『何かが狂う』と



言っていい。他人の常識のままなら、宇宙の誰も



恋などしないのだ。



特にここは異世界である。



元の地球の感覚は通じない部分があるのだから。






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