最悪の場合は
「幸太郎君が『冥界門』を開いた・・・」
「・・・ひとつだけ良かったのは、幸太郎が自分の意志で
門を開いたように見えたことね。
これなら、幸太郎の意志で閉じることも可能なはず・・・」
アステラとムラサキは空中を乱舞するゴーストを見ていた。
「ゴーストがみんな・・・泣いている・・・。
私はこんな光景見たことがありません」
「ムラサキ。わかってると思うけど、最悪の場合、私たちは地上へおりるわよ。
門を閉じることができなければ、地上に冥界の亡者があふれ出して
宇宙を埋め尽くすことになるわ・・・。」
アステラとムラサキは地上の光景を見つめる。
そしてアステラは腕を組み、ムラサキは両手を組んで押し黙った。
空中を乱舞するゴーストのうち十数体が幸太郎の周囲へ降りてきた。
ゴーストたちはみな、幸太郎にかしずくように膝をつき、
泣きながら頭を垂れた。
盗賊たちは数歩下がったところで、腰が抜けてしりもちをついた。
逃げようにも空中にはゴーストが乱舞している。
どうしたらいいのかわからず、盗賊たちはガチガチと
歯を鳴らして動けなくなった。
ゴーストたちはそっと、幸太郎の傷に手を当てた。
優しく、優しく、いたわる様に。
そして、幸太郎の脇に手を添え、体に手を添え、頭を支えて
ゆっくりと空中へ浮かべて立たせた。
幸太郎の体から血液がボタボタと流れ落ちる・・・。それは凄惨な、だが、
美しい光景でもあった。
(C)雨男 2021/11/12 ALL RIGHTS RESERVED