番外編 第二次嫁ーズ会議 2
この世界では『夫は妻たちの共同所有物』という
変わった文化がある。いや、この世界の女性にしてみれば
さほど不思議ではない。
『え? なに? じゃあ、同じ男を好きになったら、
どっちかが諦めるか、どっちか死ぬまで争い続けろっていうの?』
この『諦める』と『死ぬまで争う』が、この世界の女性には
理解しきれない。それで『仲良く夫をシェアする』という
妥協点が生まれた。
元の地球の男たちからすれば、『ハーレムじゃん!』と
喜ぶ者もいるだろうが・・・。
現実は非情だ。
1人の男に複数の女性が集まれば・・・。
あぶれる男がでるのは当然だ。
以前述べた通り、この世界では男の方が少ない。
男の方が戦闘向きに出来てるから、戦いの場は
どうしても男が多くなる。必然的に、死ぬのも男が多い。
しかし、それでもなお、1人さびしく死ぬ男は往々にしているのだ。
人が死に易いぶん、女性が結婚相手を探す目は、
かなり厳しいものがある。
『金持ち』『武力に優れている』『博識である』
『コミュニケーション能力に秀でている』、などなど・・・。
何がしか優れているものがないと、女性に告白しても
嫌そうな顔をされるだけ。『顔がいい』なんてのは
この世界の女性たちには、たいした魅力に映らない。
『顔がいいだけのバカ』はすぐに死ぬし、食っていけない。
この世界の男たちは、割と幼少期から必死だ。
親が商売などで金持ちならいいが、そうでなければ
何か『努力』をする必要に迫られる。
勉強できる環境なら、できるだけ勉強に時間を割く。
できないなら体を鍛える。親と共に働いて
コミュニケーション能力を鍛える。
どうにも才能が無さそうならば、幼馴染の女性を
大事に、大事にする。
子供の頃からの知り合いというのも
立派なアドバンテージだから。
だが、女性たちは、やはり優秀な男に惹かれる。
例えば、『一目惚れ』というものがあるが、これは男女で
かなり内容が違うという。
男の一目惚れは、単なる性欲に基づくものが多い。
しかし、女性の場合は違う。
女性は出会ってわずか1分程度で
相手の遺伝子情報を本能的に分析、自分の遺伝子と
かけ合わせた場合に、どのくらい病気などに強い
優秀な子孫を残せるかを
無意識にシミュレーションしてしまうという。
もし、優秀な数値をはじき出す男がいれば、
ろくに話してもいないのに
好きになってしまうことは有り得るらしい。
つまり、年頃の娘が無意識に父親を嫌って
遠ざけようとするのと、根本的には同じ原理だ。
女性が優秀な男を求めるのは、精神的な部分だけでなく、
本能的な部分もあるというわけだ。
そして、この世界では経済的な事情が許せば、
何人でも妻が持てる。
いや、そもそも法律自体が整備されていない。
共働きだろうが何だろうが、ちゃんと生活できるなら
誰も止めはしないのだ。
おまけに、この世界ではいい意味でも悪い意味でも
男女平等で、女性が働くことを不思議に思う人はいない。
何しろ危険な『冒険者』という職業にすら女性がいるのだから。
無論、2番目以降の妻は、最初の妻との付き合いが
うまくできることが必須条件ではあるが。
だから自分が好きになった女性が、相手の男にフラれて
フリーになるという期待はしない方がいいのだ。
意中の女性が振り向いてくれるよう、自分を鍛える努力は
怠ってはならない。
この世界の男性は・・・なかなかつらい。
コミュニケーション能力を鍛えて商売で儲けるか、
人生一発逆転を狙って冒険者になるか。
『優しい』だけでは食っていけない。
悲しい男たちが『冒険者』になる理由の1つでもある。
C級まで上がることができれば、階層突破ができる。
下級貴族とだって結婚できるし、
経済的にも少し余裕が増えるだろう。
意中の女性にプロポーズしたって、
少なくとも嫌な顔だけはされない。
まあ、逆に女性たちだって、努力しなくていいわけではないが。
何しろ生まれつき絵画のように美しい
エルフ、ダークエルフがいる。
生まれつきグラビアアイドルのようにグラマラスな
ドワーフがいる。
ケモミミ、しっぽ、生まれつき可愛い獣人がいる。
アメリカなどで猛威を振るうポリコレのように
『ありのままの私を愛して』などと考えていると、
他の努力する女性たちに、あっという間に大差をつけられる。
『外見でなく、中身で判断して』などと言っても、
それは『他の女性の心が自分より醜く、愚か』
前提でないと成り立たないし、
何より『じゃ、あんたに「魅了」か「支配」かけてみよっか』
などと言われると全て暴かれて再起不能になりかねない。
『中身で判断して』は、心の中が誰にも見えないから
成り立つロジックでしかないのである。
外見で負けて、心の美しさでも負けて、
それが知人、友人、家族に知れ渡ったら死にたくなるだろう。
この世界には魔法があるのだ。
そして・・・他人に対して、
あまりに敵対的な態度をとっていると、
最悪、町の外で『行方不明』になってしまう・・・。
まあ、ともかく『一夫一妻制』が法律で決まっている
元の地球の方が、男性には優しい世界だろう。
ただ、義務教育のアドバンテージがあるので、
日本の男性のほとんどは
『こっちの世界も悪くない』と考えるのではなかろうか。
学校で習う知識や教養、礼儀、言葉遣いは、
それだけで武器になる。
そして、この世界の女性たちの御眼鏡にかなえば
2人、3人と妻を持つ事は可能なのだから。
特にこの世界の女性たちの『考え方』を知れば
一層、そう思うだろう。




