番外編 第二次嫁ーズ会議
幸太郎たちがガンボア・オオナマズ、ガンボア・パイクを
釣りあげた(?)夜。
またも樹木の家にモコ、エンリイ、ファル、
エーリッタ、ユーライカ、クラリッサ、アーデルハイドが
集まって会議を開いていた。
まあ、今のところ何か難しい話をしているわけではない。
単に集まってだべってるだけと言った方がいい。
一応話したいことはあるのだが、横道にそれてばかりで
ちっとも本題に入る様子は無かった。
「ご主人様、カッコよかった~。悪魔3人を相手に
平然と話をする姿はしびれちゃった!
大好き! ほんとに大好き!」
「女神2人に悪魔3人。その中で唯一の人間が
幸太郎サン。すごい光景だったよね!」
「なんか、まるで人類の代表としてテーブルについてるような・・・。
とてもかないません。格が違うって感じがしましたわ!
なんて尊いお方・・・」
人類の代表というには、幸太郎はあまりにもサイコすぎるが。
「アステラ様の神々しさ、ムラサキ様の美しく、強い姿。
あれが私たちの結婚を応援してくれる女神様たちなんだねー。
初めて見たけど、もう、信者になるっきゃないじゃん!」
「ムラサキ様、ものすごい力だったわよね。
あの、えーと、ロストラエル?っていうの?
あの悪魔を稲妻で木っ端微塵にしたときはマジでびびった。
あの強い女神様と最後に握手した時、『幸太郎君をお願いね』って
小声で言われて、もう、天にも昇る気分だったわ。
完全に祝福されてるって! 勝ち確定でしょ!」
「でも、そのロストラエルが木っ端微塵になって、
一部は煙や炭になってんのに、すぐに復活した時は
寒気がしたよ。あれが『本物の大悪魔』なんだな。
教会で言ってるようなのは、下っ端悪魔ってことか。
あたいらじゃ絶対勝てないぜ。対策も立てようがないな、ありゃ」
「う、うん。わ、私も、そう、思う。あれは、女神様たち
以外には、どうにも、ならないと思うの・・・」
「でも、大悪魔には特に警戒しなくてもいいと思うわ。
私とエンリイが初めてオーガスに会った時にも思ったんだけど、
神や天使が地上に直接介入できないように、
悪魔たちも、地上に直接介入することはできないみたい。
いえ、『できない』じゃなくて、それをすると
神々と全面戦争になりかねないから、『やらない』みたいね」
「うん、ボクもそう思った。それで悪魔は、巻き添えで
『人間が絶滅』したら面白くないから、それはしないみたい。
やっぱり悪魔って、人間をそそのかして苦しめるのが
楽しいみたいだね」
「そう言えば、幸太郎様はカース・ファントムと戦った後、
『地上を地獄にするのは人間の手によってでなくてはならない』
とか言ってましたわね・・・。どうも神々の世界にも
私たちの知らない様々な歴史や暗黙のルールが
あるみたいですわね」
「じゃ、直接介入ができないから、信者や協力者を
使って人間をそそのかすってコト? リーブラさんも
セリスさんって協力者いたし?」
「セリスさんってキレイだったよね。あーあ、あたしも
ダークエルフに生まれたかったわー。そしたら、
もうちょっと胸やお尻も大きかっただろうにさー」
「それは心配ないんじゃないか? ユーライカ。
なにせコウタロウは『人族』だ。女に関しては
最も『何でもアリ』の種族だからな。
エルフの男にとってドワーフの女は『肉付きすぎ』で、
ドワーフの男にとってエルフの女は『ガリッガリ』。
好みの順番でいけば、まず結婚は有り得ないんだけど、
人族だけはエルフの女もドワーフの女も大好きだからな」
「で、でも、私も、もうちょっと、体が小さい方が・・・」
以前も述べたが、男の脳は美女を見ると、無条件に
『自分に対して好意を持っている』と勘違いする機能が
デフォルトで搭載されている。
例えば、なろう系漫画の表紙には必ずと言っていいくらい、
可愛い女の子が一番前に表示されている。
それが一番ストレートに男の読者の気を引くからだ。
女の子が可愛い、セクシー、
それだけで男の読者の獲得が見込める。
男の性欲は経済を動かすのだ。
だから、ここにいる『嫁ーズ』7人は全然心配はいらない。
幸太郎は女に免疫が無く、弱いが、男であることに変わりない。
美女から好意を寄せられたら、当然嬉しいに決まっているのだ。
しかし、幸太郎は元の地球の常識をひきずっている。
だいぶ慣れてきてはいるが、抜け出せていない。
まあ、それは仕方ないだろう。
自分の常識は簡単には書き換えられないのだ。
特に幸太郎の行動を縛っているのは
『女性は自分だけを愛して欲しいに決まってる』
という考えだ。
これは常識と言うより、当たり前の話に過ぎない。
この世界の女性だって、別に何も率先して
ハーレムの一員になりたいなどとは思っていないのだ。
ただ、人がすぐに死ぬ世界だから、
恋敵とお互いに本気で潰し合いをすると
最終的に共倒れになりかねない。
そして、自分が死んだり、その争ってる間に
他の女に好きな男が奪われたら本末転倒。
さらに、好きになった男が来週も生きてるとは限らないのだ。
だから長年の屍の山、流血の大河という歴史の末に
生み出された知恵として
『夫をシェアする』という文化が生まれた。
『同じ男のいいところを見つけた女同士、仲良くしよう』と
暗黙の停戦協定が常識として定着しただけ。
当たり前だが、『第一夫人は私だ!』という争いは存在する。
しかし、それは『まず本当に妻になれたら』の話で、
優先順位としては下位だ。
それに基本的には出会った順。
ギブルスが、もう最初から順位を決めておけとアドバイスしたのは、
無駄な争いを避ける工夫。
『今ならナンバー6と7だけど、それでいいなら妻として迎える』と
最初から言っておけば、
実際に結婚した後でもめることもないから。
無論、シェアするのが嫌なら他の男を探せばいい。
何しろ、この世界は・・・恋愛事情に関して言えば、
元の地球よりも『男が不利』だから
あぶれている男自体はたくさんいるのだ。
そうなのだ、実はこの世界の恋愛事情は、完全に女性有利。
圧倒的に不利な立場なのは男性の方である。
ちなみに妻1人に夫複数というパターンも数は少ないが、
当然存在する。
アントレイスなどは女王が最低10人以上の
夫と結婚する。それが彼らの文化。




